タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/02/17 クロコダイル
今ならしんでもいいよ・夢でなら逢える・蔑まれてもいい、好きだと言わせて
※ボツ


「あっ、そっちはだめです!」

 どれでも同じだろうと思いながら選んだその瞬間、初めて聞く言葉に驚いて固まった。否定の言葉が聞こえた気がする。いや、気のせいだ。この女はおれに殺されても構わないと言葉でも態度でも示して、それは疑うのも馬鹿らしいほどただの事実で、そんな女から拒絶の言葉が聞こえるはずがない。疲れてるんだな、とため息をつきながら固まった体を再度動かして選んだそれに手を伸ばしても届かなかった。なぜなら女がそれを自分の懐へしまったから。おれに殺されても構わないと宣う女の拒絶は幻聴でも幻覚でもなかったようで思考が揺らぐ。

「……殺されたいのか?」
「えっ、今ですか? クロコダイルさんの役に立てるならいいですけど、また急ですね」

 おれに手駒のように扱われても心の底からおれを心酔している言葉を吐くくせに、拒絶した。心変わりをしたわけじゃあないようで、眉を顰める。どこで殺されればいいですか、と前向きに検討し始めた女に一旦忘れろと宙を掴んだ手を振って諦めさせる。先走って勝手にどこかでのたれ死なれるのも気分が悪い。まつげを揺らして不思議そうに何度も瞬いておれを見上げる間抜けヅラを見下ろして、するりと懐へしまわれたそれを砂で盗み取る。おれに何をされても構わないと言わんばかりの態度は本物のくせに、緑のリボンがかけられたこの箱はおれに渡せないらしい。懐を砂で漁られても愚鈍に突っ立っていたくせに、おれの手に緑のリボンがかけられた箱が現れた瞬間飛び跳ねて焦る姿にこめかみがひくつく。

「だ、だ、だめですクロコダイルさんそれだめかえして、」

 おれに手を伸ばして取り返そうとする無謀な姿から手を上げて取り返せないようにする。うさぎのように跳ねる姿を見下ろして、嘘吐きを睨みつけても視線は噛み合わない。

「そ、それ、私の、私の手作りなんです、」
「あ゛ァ? どこのどいつにやるつもりだったんだ」
「あっあっ違います私のです私の、私が自分で食べる用、」

 何も考えずに怒鳴ったおれに涙声で返された言葉に口を閉じた。

「クロコダイルさんのはちゃんと、クロコダイルさんがいつも取り寄せてるところから注文しました! 本当はふたつ頼んで私も食べてみたかったんですけど、ちょっと高くて予算オーバーで、……でももうチョコの口になってたので、その、自分の分は安く仕上げて、……途中から楽しくなっちゃって安く仕上げるつもりがちょっと予定が狂っちゃったんですけど、……ひとりで食べるにはもったいないくらい良くできたのであとで誰か捕まえて一緒に食べようと思って持ってきてて、……えと、……ごめんなさい余計なこと喋りすぎました、その、つまり、そっちは私ので、こっちがクロコダイルさんのです、」

 疲れたのかうさぎのように跳ねるのはやめた女が一歩おれから離れてもうひとつの箱を差し出して見上げてくる。すっかり誤解が解けた気分でいるのか、危なかったあ、とほっとする姿が妙に苛ついてたまらない。馬鹿さ加減に腹が立つのか、間抜け具合に腹が立つのか、何に苛ついているのかわからない胸のざわつきに舌打ちをして腕を下ろす。

「……アレッ」

 下ろした箱のリボンが解けていることに素っ頓狂な間抜け声を出す女を鼻で笑って箱の蓋を床に捨てて、もう一度箱を持ち上げて中身を全部口の中にひっくり返す。間抜け声どころか悲鳴を上げた女に、ふん、と鼻を鳴らして舌の上に広がる甘ったるい味に眉根を寄せた。

「甘ったるいもんはひとつでじゅうぶんだ、そっちはお前が食っておけ」
「えっえっ、ど、どうして?!」