タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2025/02/23 スモーカー
恋しく思う気持ちはどこへ・寝起きのコーヒー・涙になって融けてしまうよ
※セクハラ表現
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「……あの、……なに?」
「あ?」
珈琲に口をつけながらじいっと上から下から私を見つめて、飲み終えたそれを机に置いても一度も外れなかった視線にとうとう居心地が悪くなって尋ねた。のに、私よりもよっぽど不思議そうな顔をしたスモーカーくんとようやく目が合って困ってしまう。
「……おはよう」
「……おはよう。……そうじゃなくて、……なに?」
何をどう聞けばいいのかわからなかった私に挨拶をしてくれたスモーカーくんにとりあえず私も返事をして、もう一度同じことを尋ねる。
「……なに、が、なんだ?」
ふたりしてぽかんと見つめあってたのに、またスモーカーくんが私をじろじろ見るから私も私を見下ろしていつもと違うところを探す。特にいつもと変わらない格好だと思うんだけど。汚れがついてるのかなと思って体を捻ってみたけど、そういうのもなさそう。私よりもよっぽどスモーカーくんの方がくたびれていて可哀想に思う。何日家に帰れてないんだろう? 髭もいつもより伸びているし、顔色だって悪い気がするし、髪の毛だっていつもは綺麗に後ろに撫でつけられている髪が少し乱れているし、それなのにまだ眠気を吹き飛ばさないといけないのか真っ黒な珈琲を飲んでた。
「私、おかしなところある?」
「あ? ……いつも通りだろ」
ただ眠たくて焦点が合わないだけなのかな、なんて思ったけどやっぱり何かを確かめるように意思を持って視線が動いている気がして不安になる。でも本当にただ不思議そうに答えられてしまって困ってしまった。
「……じゃあどうしてそんなにじろじろ見てくるの?」
「……あ゛?」
尋ねた瞬間、はっきりと気まずそうな声を上げたスモーカーくんに固まる。さっきまでは嘘は確かについてなかったのに、やましい何かがあることを自白したも同然な声を上げたスモーカーくんに詰め寄りたくなるのを我慢してもう一度問いかける。
「……いや、じろじろは、…………見てたか?」
「うん。……服、汚れてる?」
見えないところに汚れでもついてた? でもそれならそんなに観察したりしないですぐに言えばいいから、黙ってじろじろ私を眺める理由がわからない。スモーカーくんは自白に等しい反応をしたことを自覚していて、だからこれ以上隠さずに言葉を選んでくれようとしているのかああだのううだの唸っていて緊張する。
「…………ようやくボロが出たのね、どう言い繕っても無駄よ、セクハラしてましたごめんなさいって素直に謝るのが一番マシだと思うわ」
どこからやりとりを聞いていたのか、仮眠室から出てきたヒナちゃんが軽蔑しちゃう、と氷のような言葉を吐き出してから私たちの前からいなくなって固まる。ヒナちゃんの言葉を脳で理解するのが遅れて、理解しても尚意味がわからなくて固まったまま。ヒナちゃんを追いかけていた視線をスモーカーくんに戻したら、大きな手で顔を覆って項垂れていてさっきみたいに目が合わなかった。
「…………せくはら、?」
スモーカーくんとその言葉が噛み合わなくて、口に出してももちろん馴染みなんて一切なくて言葉が宙に消えていく感覚に訳がわからなくなる。スモーカーくんは確かに男女の体の違いのあれそれに鈍すぎて、たしぎちゃんと入れ替わってしまった時にとんでもないことをしでかしたけれど、鈍すぎるからこそあんなことをしでかしてしまったわけで、セクハラをするような男の人なんかじゃない。はず、なのに。スモーカーくんはヒナちゃんの言葉を否定せずに顔を隠して項垂れている。
「…………スモーカーくん?」
「わ、……悪かった、」
それどころか謝罪までしてきたスモーカーくんに驚いて喉が変な音を立てる。
「せ、……せくはら、してたつもりは、……いや、セクハラか、…………悪かった」
絞り出すような声に固まったまま何も言葉を返せない。あのスモーカーくんが、私にセクハラ、? でも私が気付かなかったそれをヒナちゃんは知ってたみたいで、心底軽蔑したように去っていった。本人が自白して、他者からの証言もあって、スモーカーくんの罪状は黒なのが事実。だけど、わからない。
「……いつもはバレねェようにじろじろ見てた」
「……見てただけでしょ、?」
更に自供を続けるスモーカーくんに、被害者であるはずの私がなぜか弁護してしまう。
「そういう…………クソみてェな理由でじろじろ見てた」
悪い、と顔を上げたスモーカーくんと目が合った瞬間、ぱちんとパズルのピースが綺麗にはまって、ぎゅ、と自分の体を抱きしめて後ずさる。
「へ、……へんたい」
ゔ、と呻き声をあげたスモーカーくんが、私の目から視線を逸らして俯いた先が抱きしめた体で、跳ねるように部屋から逃げ出した。
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