タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/03/03 エース
唇の味・火傷する舌・君と僕の距離


 ちゅ、と可愛らしい音がするはずだった。じゅ、と熱い鉄板に皮膚をつけてしまったかのような感覚に声にならない悲鳴を飲み込みながら跳ねあがる。焼けるように熱い唇をどうにか冷やそうと手の甲を当てながら見上げた先は涙に滲む視界。皮膚が全部真っ赤に染まったエースが陽炎のように揺らめいていて、唇の熱さの正体に気付く。唇に火傷を負ったことがわかったけれど、あまりの熱さに悲鳴を上げることもできなかったことが不幸中の幸いとしか言いようがない。だって私の自業自得なのに火傷をして、唇が焼けた悲鳴なんてあげたらエースを傷付けてしまっていた。普段私から背伸びした程度なんかじゃ近付けない顔が、エースが背中を丸めていたのと私が段差のある場所に立っていたおかげで近い距離にあってつい、魔が刺した。付き合ってるはずなのに友達と変わらない距離感に焦れて、私から仕掛けようとキスをして、いたずらに笑い合う予定だった。のに。まさか、エースがこんなに照れ屋だとはわかっていなくて、私のせいで駆け足飛びになってしまった恋人同士の接触に能力が暴走するほど戸惑わせてしまった。ぼっぼっと燃えるように赤い皮膚は比喩なんかじゃなくて肩や足が炎に渦巻いていて、悲鳴にならないほどの痛みと火傷を負ったとはいえこの程度で済んだことにほっとする。もう二度とエースにキスできなくなることにならなくてよかった。反省もそこそこにそんなことを思って、燃えて固まったままのエースを涙が乾いた視界で今度ははっきり見つめる。

「わ、わりィ、ぶつかった」

 私から仕掛けたことなのになぜかエースが謝るから首を傾げる。私が火傷したことには気付いてなくて、唇と唇がくっついたことはわかってて、なのに、謝られた。ってことは、

「……いやだった?」

 そんなに真っ赤に茹だってるのは、照れてるからだって思ってた。でも、そうじゃなかった? 不安になって俯きそうになる。だけど、俯いてしまったらエースの反応が分からないから、言葉でも態度でもどう思っているか知りたくて頑張って俯かないようにする。

「そっ、んなわけねェだろ!」

 勢いよく否定されて胸を撫で下ろす。良かった。付き合ってるからって勝手に事を進めすぎて嫌がられたら申し訳ないし、自分勝手だけど悲しくなるところだった。本当によかった。

「……じゃあ、どうして謝るの? エースじゃなくて、私からしたんだよ、……謝るなら私でしょ? ……謝った方がいい?」
「ぐ、……ッ、」

 私と同じように手で口を覆ったエースが呻きながら更に炎に包まれてちょっとだけ焦る。

「……謝るな、…………くそッ、……恥じィ、」
「恥ずかしいだけ? ほんとにいやじゃない?」

 言葉通り真っ赤に染まってぶんぶん首を振るから、嘘をついていないその姿にひりひり痛む唇を調子に乗って動かしてしまう。

「……じゃあ、これからもちゅーしていい?」
「ばっ、だっ、おまっ、」

 ボンッ、と爆発したエースに反射的に悲鳴を上げて、それから込み上げてくる笑いをどうにか手の中に隠しきる。よかった、嫌がられてない。ただ尋常じゃなくうぶで、照れてるだけ。私の唇が使い物にならなくなる前に慣れてほしいな。