タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/04/04 ゾロ
君のために死にたい・柔らかな癖毛・手の中にある専用回線


「もし記憶喪失になったらどうする?」
「あ?」
「恋人が記憶喪失になったから混乱させたくなくて大人しく身を引く話を読んだの」

 この二人はハッピーエンドになれたけどね、と笑いながら本を閉じた恋人に、突拍子のない質問が放たれた理由がわかって呆れる。

「ゾロが記憶失っちゃったら私たちのこと捕まえようとするんだろうな」
「……まあどこまでの記憶を失うかにもよるな。海賊になった経緯を忘れてんなら仕方ねェだろ。ちゃんと隠れてろよ。斬りたくねェから」
「あは、ひどい。隠れてないと斬っちゃうの? 愛の力で立ち止まってよ」

 無理だろ。まあ隠れてなくても敵意のなさそうな女相手を斬るはずもねェが、おれを止めようとするルフィとの乱闘で万が一にも怪我させちゃ困る。

「ルフィたちがおれを取り押さえてから出てこい」
「出ていったら一目惚れしてくれる?」
「海賊にとっ捕まって拘束されてる時にそんな馬鹿みたいに浮かれるわけねェだろ」

 ひどい、とまた楽しそうに笑われておれも鼻で笑う。

「じゃあ私たちはハッピーエンドになれないの?」
「一日じゃ無理なだけでいずれ勝手にそうなるだろ。お前がその本の奴みてェに身を引いたとしても、お前がお前でいる限りおれは勝手に好きになる」

 それがお前にとってのハッピーエンドになるかどうかは知らねェけど。

「おれよりお前だろ。お前が記憶失ったらおれはどうすりゃいいんだよ」

 何故だか不思議そうに瞬きを増やしてじっとおれを見つめる姿に眉を顰める。おれはたとえお前が逃げたとしてもどうせまた勝手に惚れるからどうでもいいんだよ。お前はどうやったらおれに惚れてくれるんだ。今ですらこんな朴念仁に付き合ってるお前の考えがわからねェのに、記憶を失われたらもうどうしたらいいのかわからない。きっとお前はお世辞にも親しみやすいとは言えないこの顔に泣きまではしなくても怯えて近寄らないだろうし、お前がこの顔に慣れてくれたとしても口下手なおれがどうやったらお前をもう一度口説き落とせるのかがわからない。