タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/04/20 ロー
君以外要らない・幸福は意外なところにある・ときめきをください
※ボツ


「お前がいると、困るから、離れろ」

 呻くように吐き出した言葉に何度も瞬いていて、理不尽に酷いことを言われたその姿にまた胸が軋む。あの船で数日過ごせば理由なく虐げられることなんてなく愛される確固たる自信が出来上がるせいか、誰かに酷いことを言われたなんて思いつきもしないのか未だにおれの言った言葉を脳が処理できていないらしい。首を傾げておれの懐に一歩入り込んで下から見上げてくるから、視線を落としたところで意味がない。ばっちり合った目がおれをまっすぐ見つめて、何が困るの、と優しい音で深追いしてくる。その瞬間、心臓を掴まれ死にそうになったあの時の感覚が蘇って小さく呻く。

「私がいると何が困るの?」
「……とにかく困る」

 返事もしないで呻くおれに再度優しく問いかけられても、同じことしか言えない。だって、おれにもよくわからない。心臓を取り出して診ても異常なほど脈打つだけで、何か悪いところがあるわけでもない。それでもやっぱり、日常に支障をきたす。コラさんみたいにすっ転ぶまではいかなくても、躓いたりすることが増えた。クルーの話をきちんと聞き取れないことも多い。それはいつもこの女が視界に入っている時で。今はまだ、キャプテンったらドジなんだから、と好意的に捉えられているが、いつ致命的なドジをしでかすかわからない。理由がわからなくても原因はわかっているのだから、それを排除さえすればよくて、だから、今そうしようとして、現在進行形で困りきっている。意味もなく理不尽に排除されそうになっているのに、おれがお前を傷付けるなんて思いもしないのか不用意に距離を詰めてくる女に一歩二歩と後ずさっても同じように追いかけてくる。とうとう追い詰められて背中に壁がくっついてまた呻く。

「私のこと嫌い?」
「……嫌いとかそういう問題じゃねェだろ、おれたちの同盟も終わってる、……そんなに無防備に近付いてくるな」
「私はローのこと傷付けたりしたくないよ」
「お前たちが馬鹿なほどお人好しなのは知ってる。てめェの心配をしろって話だ」
「ローだって私のこと傷付けたりしないよ」

 不思議そうにさも当たり前のように返された言葉にまた心臓が変に痛む。意味がわからない。まさに今、お前に理不尽なことばかり投げつけて傷付けてるのに。

「……とにかく、この距離は困るとか以前におかしい、離れろ」
「じゃあどうしたらおかしくない?」

 どうすれば困らせない?と言いながらおれの服を縋るように掴むから固まる。どうしたらも何も離れろと言ってるのにしまいにはくっついてきやがって、この平和ボケした頭にどう説教してやればいいのかわからなくて喉が引き攣る。

「麦わらの一味と、ハートの海賊団のキャプテンだから駄目なの? じゃあ、もしも私たちが海賊じゃなかったらおかしくない?」
「……海賊じゃなくてもこの距離はおかしいだろ」
「じゃあなんだったらおかしくない?」

 少しでも接触を減らそうとべったり壁に背中を引っ付けてもそれ以上にくっついてこようとするから心臓が潰れてしまいそうだ。なんだったらおかしくない、と聞かれたって、こんな距離、誰とだって近付いたことがないから比べようもない。こんな距離で話してる奴らも見たことない。そう考えて、働かない思考回路ががたつく引き出しを開けた。そういえばこの距離は、父様と母様が、?

「はなれろこのばか!」

 訳のわからない症状の理由が一気に何もかも理解できて、うるさい心臓の音を掻き消すくらい大きな声で喚き立てた。