タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2025/05/11 ロー
君の欠片に触れていたい・小さな自己主張・解けたリボン
※ボツ
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「……結べないのか」
鏡の前で悩んでいる姿を見かけたのがきっかけだった。気付かれていなかったのか床から足を浮かせてしまうほど驚かせてしまったことにほんの少しの申し訳なさを感じて、結んでやろうか、と口をついて出た。驚きに煩くはねる心臓を服の上から抑えながら不思議そうにおれを見上げる姿に居た堪れなくなって視線を逸らす。
「結んでくれるの?」
「簡単なものならな」
顔を見ていなくても喜色満面に輝いたのがわかって視線を戻す。想像通り嬉しそうにおれに駆け寄ってこようとしたのを制しておれから近付いてヘアゴムを受け取った。くるりと体を回して鏡に向かう女の髪を見下ろして、一瞬だけ躊躇って覚悟を決めた。
「……黒足屋みたいに凝ったものはできねェぞ」
「うん! ありがとう」
鏡越しに礼を言われて、口をもごつかせる。そんなに喜ばれるような出来にはできないのに。
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「あ、」
自分たちがなんなのか忘れてるのか無防備に一人歩く女の姿を宿の窓から見つけて目を細める。麦わら屋たちがいるならここの島も騒がしくなるな。見つからないうちに退散する準備をさせておくか、と考えた瞬間、結んであったヘアゴムが緩んだのか髪が風にたなびいた姿に眉を顰める。立ち止まって手のひらのヘアゴムをじっと見つめる姿が不憫に思えて、見つからないようにしようとした決意が揺らぐ。鏡の前でずっと悩んでいたのを知っている。ただ結んだだけなのに、すごい宝でも見つけたかのように喜ぶ姿を知ってしまっている。感情が昂りすぎたのか頬を赤く染めて嬉しそうに何度もおれに礼を言ったあいつが、ひとり解けた髪を風に靡かせて悲しそうに俯いている。出来もしないのに腕を後ろに回して髪を触る姿をとうとう見ていられなくて、決意が消え失せて青い膜をはった。
「?! ろ、ろー!? びっくりした! この島にいたの? 久しぶりだね! 会えて嬉しい! でも急にシャンブルズするのはびっくりするからやめてほしい」
静かだった宿が瞬時に華やいで驚きながらも喜ぶ女に圧倒されて入れ替えた時と同じ体勢のまま固まった。髪に触れていた手が下ろされても髪が解けていないのは、緩んで解けたはずのヘアゴムがあるべき場所におさまっているから。
「髪、結べないんじゃねェのか」
「え?」
一瞬で結われた髪に、鏡の前でうんうん唸っていたいつかの姿を思い出す。髪の毛の感触を今もまだ覚えている。あの日は決して夢なんかじゃない。おれの言葉に、あ、と心当たりのあるような声を漏らした姿をじっと見つめれば、気まずそうに視線を逸らされて心臓がざわついた。
「う、うそは、ついてないよ、……結べないって言ってないもの。ローが勘違いして、……嬉しくて、甘えただけ」
ごめんなさい、と地面に落とされた謝罪に思い出す。確かに、結べないとは言われていなかった。おれが勝手に鏡の前で思い悩む姿を見て勘違いしただけ。普段のおれならそもそも鏡の前で思い悩む姿を見ても声はかけないし、結んでやろうかなんて言葉もかけない。おれが、お前の髪に触れたかったから、だから、これ幸いと言わんばかりに何も考えず声をかけて、……それで。
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