タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/05/30 ロー
ひた隠した思いが裏目に出て・罪なのか、それとも・夢は夢にしかならず
※なんでも許せる人向け


「怪我をしたのか」

 自然と硬くなる声で呟いた瞬間、さっと左腕を背中に回す姿に眉を顰める。そんな子どもじみた隠し方、医者相手じゃなくたって誤魔化しきれない。おれの視線に根気負けしたのかおずおずと隠していた左腕を元の位置に戻して、えへ、と気まずそうに笑う姿に舌打ちをしそうになる。どいつもこいつも人のために命をかけようとしやがって。

「トニー屋はどこだ」
「……ロー、怒ってる? 隠したから?」
「あ? わかってるなら二度と隠そうとするなよ」

 どうせ怪我をするな、なんて言ったところで聞きやしないのはわかりきっている。なら無駄なことは言わずにせめて隠すことだけはするなと説教はしたいがどうせこいつはそれだって聞かない。そんなのはこの短いながらの濃い付き合いで十分知り尽くした。それでも何度だって注意はする。それで嫌われたとしても、傷を手当てすることの重要さを説くことの方が大事だ。
 既に嫌われているのかおれの顔をびくびく見上げて、申し訳なさそうに謝りながら近付いてくるから慌てて一歩下がる。なんでこいつらはたった一度同盟を組んだだけでこんなにも距離感を近付けてくるんだ。少しは周りが海賊だらけだってことを意識しろよ。一般市民のオトモダチ関係なんかじゃねェんだぞ。そりゃ怪我を隠すなだのなんだの言うおれだってこいつ相手にお人好しなことをしてしまっている自覚はあるが、おれは一応これが異質な関係だってことをわかっている。でもお前はわかっていない。おれ相手ならまだいいが、他の海賊相手にもこの距離感でいいんだと思われてしまうのはよくない。だから、最後の一線は引きたいのにずかずかと踏み込んでこようとする。

「ごめんなさい、もう隠さないから、だから見離さないで」
「あ?」
「……同盟解除して、今は敵だから? そんなの、優しいローには関係ないでしょ」

 なんの話をしてる。お前のことを敵だと思って見離しているならそもそもこんな馬鹿みたいに懇切丁寧に注意なんかしやしない。怪我をしたって笑って隠そうとしていた強い女の目が潤んで、喉が引き攣る。

「今目の前にお医者さんがいるのに、どうして私のことは診てくれないの?」

 瞬きをした瞬間、とうとう涙が落ちて思考回路が爆発したのがわかった。どうして、って言われたって、。

「お、れは、人間しか診たことがないから、専門外だ、……余計なことをして、悪化させたらどうする」
「……? 私のこと、攻撃してきたの、確かに見た目は少し人間離れしてたかもしれないけど、人間だったよ」

 潤んだ目が不思議そうに何度も瞬く数が増えたからか、水滴をしっかり溢しきってそれ以上涙を流さないことに安心したのも束の間、要領の得ない答えに眉を顰める。やっぱりお前、怪我で意識が混濁してるのか?

「……お前が人間じゃないだろう」
「……え?」
「頭に輪っかもねェし、背中に羽も見当たらないが、お前が人間じゃないのは見てわかる」

 言い当てられたことに驚いたのか目を丸くして固まってしまった女に、これ以上の問答は手当を遅れさせるだけだとトニー屋を探すことにした。