タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/04/04
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おれの背後でレディが右往左往しているのがわかってだらしなく頬が緩んでしまうのは仕方がない。だって可愛い、可愛すぎる。ぐう、と可愛さに呻きそうになる代わりにゆっくり煙を吐き出して短くなった煙草を捨てて気を紛らわせる。紛らわせない。可愛い。もう振り向いてもいいかな。でもレディに見つめられ続けたい、レディから声をかけられるという奇跡を受けたいと欲が滲んでしまって船縁を握り締めることでどうにか耐える。ちょっと足はレディの方に向いてるかもしれない。レディが何を悩んでいるのかわからないけれどおれに声をかけてくれるのが先か、おれが耐えきれなくなるのが先か、答えはもうほぼわかっていて、よし、と顔を上げようとした瞬間だった。
「さん、サンジくん」
「ッなあに?!」
「ひゃっ」
愛らしい声がおれの名前を呼んで振り返るだかのつもりが勢い余って一回転しそうになった。それどころか大きな声を出してレディを驚かせてしまって本当に申し訳ない。レディから声をかけられるってこんなに嬉しいんだと思って。ばくばくと心臓が変なリズムを刻むしなんだかふわふわするしレディは真っ赤で可愛いし。……真っ赤なのは夕日のせいだろうか、いやおれは夢を見たい。おれに声をかけておれと見つめあってるから真っ赤になってると思い込みたい。きっとそうだ。正解。よし。気を落ち着かせて、いや全く落ち着かないけど今度は声量を間違えないように気をつけながら口を開く。
「ごめん、どうしたの?」
「あの、……あの、今日、サンジくんが船番の日でしょ?」
「うん」
エッ待って抱きしめてもいい? 小さな声で俯きながら遠慮がちに確認するレディのいじらしい姿が可愛すぎるのと、続く言葉に期待しすぎてしまって興奮で息が荒くなりそうになる。だってこれ一緒に過ごしてもいい?しか続く言葉なくないか? 他に何かあるか? ないだろ? だってもう今は夕方で、本来ならきっとナミさんやロビンちゃん達と一緒にホテルでドレスアップして(それも見てェ)ディナーの準備に勤しむ時間だろ? わざわざこの時間に船に戻ってきて気恥ずかしそうにわかりきったおれの予定を聞く理由なんてもう、一緒に過ごしてもいい?の前振りでしかなくないか? そうだろ? 抱きしめてもいい?
「あの、その」
尚も言いにくそうに言葉を詰まらせるからどんどん期待に染まる。もう、何も言わなくても良いよ!!と大きな声で返事がしたい。でもさっきのことを思い出してグッと我慢する。自分から動くんじゃなくて、レディからの言葉と行動をもらえることがあんなに嬉しいんだということを知ってしまったから。でも後ろから声をかけられるだけであんなに心臓が大暴れしたのにレディと夜を一緒に過ごして良い?だなんて言われたら嬉しすぎてぶっ倒れてしまうかもしれない。落ち着け。大丈夫。飛び出す言葉の破壊力は理解してる。レディがもじもじしてかわいいから準備時間はまだある。心構えさえしていれば鼻血はちょっと出るかもしれないけど倒れるなんてことにまではならない、はずだ。大丈夫。いける。大丈夫。すぅ、と息を吸う音が聞こえておれの体もこわばる。破壊力抜群のおねだりが、今から、
「な、ナミちゃんとロビンちゃんたちと一緒にディナーの準備しようと思ってたんだけどね、」
ほら、かわいい。もうこれ後に続く言葉はおれを思い出して一緒に朝まで過ごしたくなっちゃった♡しかないだろ。逆にそれ以外に何かあるか? ねェ。
「……サ、サンジくんのごはんが食べたくて」
「喜んでェ!! エッ?!」
「ほんとに? よかった!」
アレッちょっと待って、ずっと心構えしてた言葉と違う言葉が聞こえた気がする。待って。レディその花が開いた笑顔はとてもかわいい。安心したように笑う姿はとても愛らしい。でも待って。違う言葉を言わなかった? おれがレディの言葉を聞き逃すはずがないから頭の中で時間を巻き戻してもう一度さっきの言葉を反芻する。……サ、サンジくんのごはんが食べたくて。ごはんが食べたくて。ごはん?
「船番とはいえせっかくひとりの自由な時間なのにわざわざ私の分作ってもらうの、申し訳ないなって、思ってたんだけど、その、……よかった、うれしい。ありがとう」
「へぁ、」
「サンジくんって料理が本当に大好きなんだね」
まともに相槌も返せなかったのにそんなおれのことは気にも止めず嬉しそうにはにかむレディの姿は本当に愛らしい。うん、おれ料理、大好き。本当に、心の底から大好き。
でもおれ、こんな馬鹿みたいに浮かれて勘違いするほど君のことも大好きなんだけど。
もごもごと口の中で呟いても音にならなければレディには伝わらない。……まあいいや、ちょっと、いやかなり思ってたのと違うけど。レディの心はまだ射止められていないけど、レディの胃袋はがっちりしっかり掴めてるみたいだから。コック冥利に尽きるな、と思わず頬が緩んだ。
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