タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/06/26 スモーカー
硝子の器に君の雫・一度でいいからキスをください・思いの中に囚われる


「初恋は実らねェらしいな」
「……うん? そうだね?」

 スモーカーくんの口から似合わない話題が飛び出てきて一瞬頭の中でその単語がうまく処理できなかったけど、なんとか無視せずに返事できたことに安心する。

「てめェも実らなかったか?」
「……ないしょ」

 可愛らしい話題を口から出せてもデリカシーは相変わらず忘れてきてしまうのか可愛らしくなくずかずかと心の淡い部分に踏み込んでこようとするから苦く笑う。唇の前で人差し指を立てて濁せば、とてもこの話題を振ってきた側だとは思えないほどの眉間の皺と目付きで見下ろされて目を泳がせた。

「……てめェでも実らねェのか」
「それどういう意味?」

 秘密、の言葉を勝手に解釈した上で言われた言葉に首を傾げる。私でも、って、私、そんなに恋愛に強そうに見える? 恋愛の話をスモーカーくんとするのだって多分これが初めてで、そんなふうに思われるようなこと言ったことないと思うけどな。不思議に思いながら人差し指を下ろしてスモーカーくんを見上げて、ばっちり絡んだ射抜くような視線に瞬く。

「一旦おれのこと振れ」
「……なんて?」
「あ? 一旦おれのこと振れって」
「聞こえなかったわけじゃないよ」

 意味がわからない私と、なぜ意味がわからないんだと言わんばかりに黙り込んだスモーカーくんでしばらく見つめあって、首を傾げた。

「恋したの?」
「……」
「はじめてなの?」
「……」
「だから一旦振られれば初恋じゃなくなって、次の告白は実るかもしれないって思って変なこと言い出したの?」
「……わかったなら一旦振れよ」

 訳のわからない思考回路に思わず笑って、笑えば笑うほどスモーカーくんの眉間の皺が増えていくのが滲んだ視界で見えるから笑うのをやめたいのにどうしたって込み上げてくる。人の柔らかな部分を笑うのは本当に悪いことだから、笑わないようにしたい気持ちは本当なのだけど、それにしたって突飛で可愛らしい思考回路がどうしても愛おしくて頬が緩むのは抑えられない。

「ふふ、っ、ふ、ご、ごめん、笑ってごめんね」
「……」
「でもさ、初恋は実らないっていうのは絶対じゃないし、スモーカーくんの場合、お前が初恋なんだって正直にぶつかった方がいいと思うけどな。嘘でも別の人に告白して振られてきたってバレたらそっちの方が好感度下がっちゃいそう」

 でもそれくらい振られたくなくて試行錯誤したって考えたら可愛く思えるのかな。スモーカーくんの好きになる人ならどう思うんだろう。うーん、……やっぱり人それぞれの反応になるよね。なんて、考え込んでいる私にまだ視線が突き刺さっているのを感じてスモーカーくんを見上げる。案の定眉を顰めたまま私をじっと見下ろしていて首を傾げた。

「スモーカーくんならきっと大丈夫だよ」
「……、これも振られたことになるか?」
「……? どうして? 応援してるのに」

 ぐ、とどこか悲しそうな顔をするから思わず焦る。笑っちゃったのが傷付けた? 確かに突拍子のなさすぎることをしたけど、初恋をあんなふうに笑われて傷付かない人なんていない。遅すぎる反省と後悔に焦って謝罪を口にしようとした瞬間、先にスモーカーくんが口を開いたから慌てて聞く体勢に入る。

「応援するってことは、脈もねェし、遠回しに振られてるだろ」
「……え?」
「おれが、嘘で告白するような男だと思われてるってことだろ」
「…………え?」
「だが別に、結果は同じだ。これで初恋じゃなくなっただろ、じゃあ次は振られねェな?」

 ふん、と高飛車に顎をあげて、だけどどこか不安そうに揺れる目に貫かれて混乱が脳を支配する。

「お前のことが好きだ、おれのそばにいてくれ」