タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/07/22 ロシナンテ
恋しく思う気持ちはどこへ・無垢な瞳が瞬く・君の手の大きさに慣れた私の手
※ローが不憫
※夢主が空気を読めない
※なんでも許せる人向け


「……お前、よくおれのうしろ見てるよな」
「見た目が好みなんだよね、ローに憑いてる悪霊さん」
「…………あ?」

 見た目が好みだと言われているはずなのに全く目が合わなくて何言ってるんだこいつ、と思ったのも束の間、訳のわからないことを言い出すから固まる。何ふざけたこと抜かしてるんだ。思わず背後に意識をやって、あまりの馬鹿らしさに慌ててかぶりを振る。馬鹿なこと言うな、と、おれが言葉を吐き出すよりも先にどこか遠くを見ながらまた話し出した女に圧倒される。

「悪霊って言っても特に悪さしてるわけじゃないんだけど、……見た目が本当に好みで。あ、転んじゃった。驚かせちゃったみたい。そういうところも可愛くてつい目がいっちゃうの、ごめんね」
「………………あ?」

 ふふ、と微笑ましそうに地面を見つめる女につられて地面に視線をやったところで何もない。それでも、心当たりがある気がする。この船の奴らは突拍子のないことをやらかしてよくおれを振り回してくるが、悪趣味な冗談は言わない奴らだ。だが、それでも、馬鹿げた思考回路に頭が爆発しそうだ。

「……その、すっ転んでるやつの、見た目は」
「金髪でピエロのメイクをしてる、……ごめんなさい、知り合いだった?」
「……こらさんだ、」

 ようやく視線が合った女が、申し訳なさそうに謝ってくるが、謝る必要なんてない。謝るのはおれの方だ。

「コラさん、ごめん、……コラさんはそんなつもりなかったかもしれないけど、おれのせいで、コラさんのしなきゃいけなかったこと、中断させちまったから、だからおれ、────」

 おれが代わりに、と地面に転がってるはずの見えないコラさんに謝ろうとしたのに、続きの音が出なくて固まる。覚えのある感覚に、鼻が痛くなる。コラさん、おれ、これ好きじゃない。コラさんを犠牲にして何もできなかった子どもの頃を思い出すから。

「ロー、コラさんは謝ってほしくないんだって。コラさんはローがつらそうだから何かしてるならやめてあげて」

 静かに宥める声がひとつだけ響いて、おれの音が世界に戻ってくる。ほっとして、宥められた言葉を思い出した。謝ってほしくない。コラさんの言いそうなことだ。わかってる。わかっててもそれ以外におれがコラさんに言えることなんてない。

「……おい、……コラさん、悪霊なのか」

 ぐるぐる考えて最初の発言を思い出して焦る。

「うーん、悪い感じはしないけど今、ここにいるから……」
「コラさんが天国に行けないなら、誰が天国に行けるんだ」
「……ローの家族、だって」
「……コラさんだって、行けるはずだ。おれのせいか?」
「そんなわけないでしょう。あ、ハモった、ふふふ、相性いいですね」
「……おい、おれの状況わかってるか? 口説くな」

 すっ転んだコラさんはもう立ち上がってるのか見上げて口説き出した女に気持ちをどう保てばいいのかわからない。見えないが死んだ恩人がそばにいてくれたことを知ったのに、それを教えてくれた女が恩人を口説きだしている。そういえばそもそもの話の発端がおれの後ろに憑いている存在が好みだのなんだのの話だった。

「コラさんは私のことどう思いますか?」
「おい、口説くな、先におれとコラさんの通訳に徹してくれ」
「えへ、良い女だなって」
「おいコラさんもなんで満更でもねェ返事したっぽいんだ」

 おれを盾にして照れだした女に呆れてコラさんに文句を言っても見えないもんだからどこか宙ぶらりんになる。でももう二度とこんな文句なんて言えないと思っていた人が見えなくてもそばにいると知って心臓が変に軋む。そんなこと言ったら勘違いでまたコラさんを心配させそうだから黙って、コラさんがいるんであろう場所をおれも見上げる。

「なァ、コラさん、……ありがとう、おれだって大好きだ」
「……泣きながら抱き締めてるよ」
「はは、コラさんが幽霊じゃなかったらおれ潰れてそうだな」

 そうかも、と頷かれて、なんの感触もない場所を勘で撫でて慰めた。

  ▼▼

「おっきくなったなァって泣いてるよ、泣いてても可愛いですね、あ、また転んじゃった」
「コラさんのおかげだ、……口説くのやめてくれるか?」