タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2025/08/27 ロー
優先すべきは全部君・夢でなら逢える・手の中にある専用回線
※現パロ
※書きたいところだけ
これの続き
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お兄様の馬鹿、意気地なし、ひどい、と散々ななじられ方をして玄関を追い出された先に原因となった女が困ったように微笑んでいて固まる。今日がラミの家庭教師最後の日だった。ラミは成績も伸び、無事に合格もして、つまりそれは先生の仕事が終わったということで、さよならの日だった。めでたい事のはずだ。ありがとうと感謝の涙を流すことはあれど、こんなふうにマイナスな意味で泣き喚く別れはきっと滅多にないと思う。ラミは先生が大好きだから。おれも、この人が大好きだから。だからラミになじられた。恋の自覚を促され、タイムリミットがあるよとあんなにも言われていたのにおれが何もできなかったから。ただの先生と生徒だから、プライベートな連絡はもう二度とできない。ラミは賢いからちゃんとそれを理解していて、先生、ありがとうとほんの少し涙を滲ませて別れを告げていた。こちらこそありがとう、楽しかった、と笑う先生の顔が玄関の扉が閉まって見えなくなった瞬間にぽろぽろと堪えていた涙を流しながらおれをなじって、追い出した。
「送ってくれなくても大丈夫なのに」
最近は陽が落ちるのが遅いからまだ明るいのに、と空を見上げて遠慮する姿に首を振る。
「最後だし送らせてくれ」
「……ありがとう」
贔屓目を抜きにしたってあんなにも可愛がってくれていたラミとすらきちんと一線を引いて先生と生徒の距離を保っていたから、生徒の兄でしかないおれの相手は困らせるだけなのはわかってる。それでも最後だからか送ることを了承してくれてほっとした。おれの玄関から転がり出る様があまりに哀れで同情してくれただけかもしれない。
送るったって、小粋な会話なんてできるわけがない。そんなことできる性格ならそもそもタイムリミット前に告白だってして、結果どうなろうとラミに意気地なしとなじられることもなかった。
「ラミちゃん、泣かせてごめんね」
「……いや……誰も悪くないだろ」
困ったように笑わせてしまうことが申し訳ない。ラミだってちゃんとわかってる。それでもまだ子どもで、柔らかい心じゃ耐えきれなくて体に出てしまうだけだ。寧ろラミはまだ大人な方で、おれがもしラミと同じ年齢ならもっと泣き喚いてるしずっとここにいてくれって父様と母様に頼むし先生にだって直接わがままを言って困らせてる。コラさんに頼みに行ってたかもしれない。そんなことをせずにすむ理性がある大人でよかったはずなのに、それを表に出さないからこのまま接点が消えてしまう。
「送ってくれてありがとう」
「……いや、こちらこそ、今までラミを見てくれてありがとう」
晴れやかに笑う姿はバイトが無事に終わったからだ。別におれたち兄妹と別れることが嬉しいわけじゃない。そんなことわかってる。それでも胸が痛む。そもそも生徒でもないおれが落ち込んでるなんてきっと理解されない。意気地のない男がもじもじとひとり恋をしていただけだから、知る由もない。今生の別れじゃない。大学へ行けば会える。でも、接点がなくなってしまった。今まではラミのことを話せた。明日からは? 声をかける理由がなくなってしまった。会話が下手なおれは、ラミをダシにすることしかできない。ラミを封じられてしまったら、なんて声を掛ければいいのかわからない。寂しい。悲しい。いっそラミみたいに泣いてやろうか。そうすれば優しい女は電車に乗れなくなる。そんな時間稼ぎ、一体何になるんだ。
ひらり、と手をあげられて、つられておれも手をあげる。それが別れの挨拶だと気付いた時には手遅れでじゃあね、と踵を返されてしまった。別れの挨拶だってわかってたら、手を振らなかったのに。改札を通る時に、階段を降りる時に、いちいちおれを振り返ってはまた手を振ってくれる。何度も繰り返される別れにつらくなって手を下げた時にはもう背中が見えなくて、意気地のない男がひとり取り残された。
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いつもの席にラミの先生じゃなくなった女が座ってる。いつもと変わらない背中にため息をつきそうになる。おれは胸にぽっかりと穴が空いたようで体をまっすぐに保てない。いつもならラミの話をしに行くのに、今日は他の学生が片付けをはじめても動く気にすらならなくて机の上のレジュメに今度こそため息をこぼした。
「具合悪いの?」
「……あ?」
腑抜けたおれの耳に声が届いて顔を上げる。心配そうにおれを見下ろしていたのは接点のなくなった先生でもなんでもなくなった女で固まる。具合、悪いの?ともう一度優しく落とされて慌てて首を振った。はじめて、おれからじゃなく始まった会話はあまりにもイレギュラーすぎて戸惑う。接点がなくなっても、話しかけてくれるのか。おれが具合悪そうだったから? じゃあ今度からもまた具合悪そうに見えたら声かけてくれるのか? なんて馬鹿なことを考えてかぶりを振った。
「本当に平気?」
「ああ、いや、別に具合は悪くない、ら、らみが、」
「ラミちゃん?」
いつものようにラミをダシにしようとして何も思いつかなくて口が止まる。やばい。何か言わなければ。なんでもいいから。
「ら、ラミが、落ち込んでて宥めるのに苦労しただけだ」
「……そっか、……ごめんね」
間違えた。責め立てるような物言いになってしまった。
「ラミちゃん泣かせちゃったから、もうだめかな?」
そもそもおれたちが勝手に落ち込んでるだけだから何も申し訳なく思う必要なんてない。立派にバイトをしてくれただけだ。駄目なんて誰にも言わせない。……何が駄目なんだ? わからなくて首を傾げる。
「私、ローくんのこと、寝癖とおへそしか知らないの」
「────ぶっ?!」
何が駄目なのかわからなくて次の言葉を集中して聞こうとした瞬間、訳のわからない言葉が聞こえて吹き出す。いや、訳のわからない言葉なんかじゃない。一番最初にやらかした失態だ。おれが駄目な話じゃねェか忘れてくれ。
「冷たい言い方になっちゃうけど、ローくんはバイト先の生徒さんのご家族だから踏み込んだりするのは駄目で、」
うーん、と言葉を選ぼうと悩む姿に心臓がつきつきと痛む。わかりきったことだがしっかり境界線を引かれてた。冷たいも何もない、ただの事実だ。
「ラミちゃんに先生って呼ばれなくなるのは本当に寂しい。ラミちゃんのこと、本当に大好きだから。そこは本当に誤解されたくはないんだけど、でも、バイトが終わって嬉しいこともあるの」
「……、」
何を言われるのかわからなくて怯える。おれたち兄妹が死ぬほど落ち込んだタイムリミットに、どんな嬉しさがあったのか。
「寝癖とおへそ以外のことをようやく聞けるから」
恥ずかしそうに紡がれた言葉の意味がわからなかった。おれの恥がなんだって?
「ローくんとちゃんとお友達になりたいの。まずは連絡先、聞いてもいい? それともやっぱり、ラミちゃんを泣かせちゃった私とはお友達になれない?」
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