タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/09/02 スモーカー
鼓膜を擽る大好きな声・不必要な自己犠牲・涙はいつか止まるもの


「スモーカーくんは何か私に不満とかないの?」
「別れねェぞ」

 会った瞬間からどこか気まずそうで眉を顰めていたが、とうとう放たれた決定的な言葉に反射で言い返す。別れ話の前兆でしかないだろ。おれがお前に不満を持つことなんてありえない。ありえないことを聞くのは、お前がおれに不満を持ったからで、お互い不満に思うことがあるなら別れましょうか、の会話に辿り着くためのきっかけにしたいからだろ。だから全部すっ飛ばして答えを用意してやったのに、気まずそうな空気が霧散して目をまんまるくしながらただおれを見上げるからもう一度別れねェぞと釘を刺す。

「……不満はない、ってこと?」
「当たり前だろうが」
「当たり前なの?」

 嬉しそうに笑われて懐に飛び込んできた恋人を慌てて煙になりながら受け止める。急に飛び込むのはやめろ、お前の柔らかい体はおれの無骨な体に当たったら簡単に傷つくだろうが。

「……別れねェからな」
「そもそもどうして別れる話になるの? 私は不満があるかどうか聞いただけだよ」
「……それを聞くってことは、お前がおれに言いたいことがあるってことだろ」

 今のところ腕の中で笑ってくれているが、その話題を出した理由をまだ聞き出していないから不安は消えない。とりあえず抱き寄せて逃がさないようにする。

「ないよ?」
「……じゃあなんでわざわざ聞く必要があるんだ」
「この間、観光の人とちょっとおしゃべりして、それで、その人の島では、喧嘩するほど仲がいいって言葉があるんだって聞いて、……」

 腕の中でまた最初の気まずそうな表情が覗いておれの胸の中に隠されて言葉も途中でかききえる。

「…………喧嘩なんざしたくねェ」
「私もしたくない、……喧嘩しなくても私たち、なかよし?」
「お前がおれに不満がねェならずっとそうだろ」

 ふふ、と吐息が服越しにおれをくすぐってとりあえずほっとした。