タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/10/07 スモーカー
現実よこんにちは・抱き締める腕の強さ・ひらがなで呼ぶ名前
※ボツ
※なんでも許せる人向け


「スモーカーくんって私の名前知ってる?」
「しっ、」

 知ってるに決まってるだろうが、と即答しようとして固まる。知っている。だが、それを音にしたことは一度もない。心の中でさえ呼べない名前なのに、それを知っていると答えたら、知っているのにどうしてと当然の疑問を続けられてしまう。そんなもの、お前が好きだから以外に答えられなくて、そんなことが言えるなら名前だってとうの昔に呼べている。馬鹿みたいに初恋を拗らせたいい歳をした大人の男が固まる姿をじっと見つめられている。

「……やっぱり、知らない?」

 その視線が逸らされたことにほっとする暇なんてなかった。俯いて見えなくなった表情はその声に相応しい悲しげな顔をしている、はずだ。知っている、と答えたい。だがそれで続く言葉はなんだ。じゃあどうして呼んでくれないの、でしかない。そこでまた言葉に詰まるのが目に見えている。

「ふ、」

 震えた空気が溢れて血の気が引く。泣かせた。好きな女を、泣かせた? たった数文字の音を発せられないだけで。

「ふふ、ふ、……からかってごめんね、」

 あげられた顔には確かに涙が滲んでいた。が、浮かんでいた感情は悲しみなんかじゃなくて、笑っている姿に唖然とする。

「わかってるよ、照れてるだけだって。意地悪してごめんね」

 楽しそうに笑いを堪える姿に、冷えた血が正常に戻りだす。どころか、沸騰して皮膚が赤くなる。ばれていた。

「ちょっとだけ、呼ばれたくなったの。でも、スモーカーくんのペースでいいよ、……ごめんね、からかって、嫌いにならないで」

 おれが何も言えずに固まっているせいで不安になったのか、楽しそうな笑い声が引っ込んで沈んだ声に変わったせいで心臓が変な音を立てる。おれが意気地なしの男なのがそもそもの原因なのに、謝る必要のない女が謝っている上に反省しだした。

「お前は何も悪くないだろ、……おれが悪い」
「……でもスモーカーくんは照れちゃってるだけで私に意地悪したつもりじゃないのに。私はわかってたのに意地悪しちゃった、ごめんね」
「ぐ、……おれが情けないせいだ、お前は何も悪くない」

 尚も名前を呼べずに弁解する様は本当に情けない。どうにか名前を呼ぼうと口を開くのに、目が合うと途端に音が出なくなる。

「くそ、……呆れないでくれ」