タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2025/10/29 クロコダイル
抱き締めた身体はあまりにも細く・触れたら壊れてしまいそう・解けないように絡める指
※夢主の暴力表現


「どうする気だ」

 どうしよう、と震える小さな声が聞こえて問い返す。おれの存在にようやく気付いたのか肩を震わせて跳ね上げて見えた顔には初めて見る水滴の跡があって顔を顰めた。いつも能天気な表情しか浮かべなかった女が、見ず知らずの男によって知らない顔を浮かべていることが腹が立つ。その男が血塗れで倒れているのも、服や手が汚れるのも気にせずそばにいるのにも腹が立って仕方がない。今更介抱でもしようとしたのか? お前がその小さなナイフで刺したのに?

「じ、じしゅ、」

 自ら縄に繋がれようとする女に腹が立って腕を振るう。

「死体もないのに何の罪を白状しにいくんだ?」
「え、?」

 おれの言葉に視線を落とした先には肉の塊なんて一切なくて血を吸った黒く濁った砂しかない。

「え、いま、だって、わたし、この手で、ころ、しちゃったの、に」

 真っ赤に染まった両手を見つめて動揺する女に忍び笑う。殺したと思っているのか。動揺していたせいで聞こえなかったのか? おれが砂に溶かそうとした瞬間、小さく蠢いた肉の塊はまだ微かに生きていて、トドメを差したのはおれなのに、罪の意識に塗れた女に腹の底から笑い出したくなる。人間、意外と刺したくらいじゃ死にやしない。女の力で押し込める肉なんてたかが知れてる。そんなこと知る由もなかった世界で生きていた女だから騙される。

「死体がねェんだからお前がやっただなんて誰にもわからない。大丈夫だ、おれが協力してやる」
「でも、わた、わたしが、」
「お前の罪はおれが隠してやる」

 黒く染まった砂を更に細かく砂にして風に攫わせる。お前が曝け出したかった罪はもうどこにもない。おれのせいで消えてなくなった。おれに見つからなければお前はすぐに海軍に足を運んで奇跡的に男の命も救われて、お前の罪はすぐに洗い流せたのに、おれのせいでべっとりと塗りつけられてしまった。勝手に共犯者にされた哀れな女に手を差し伸べる。

「大丈夫だ、お前は何も心配しなくていい。おれが全部なんとかしてやろう」

 味方面して手を差し伸べてくる男こそ一番信用するべきじゃないのに、はじめて人を刺して動転した女にはそんな簡単なことすら判断できずに破滅の道への一歩を踏み出した。