タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/04/07
これの続き


「ねえ、お願いってば」

 私に触れようと伸びてきた手をどう受け流そうか考える間もなく、目の前に青い膜が張られて固まる。ブンッと音がして、私のそばにあった何かとキャプテンが入れ替わったのがわかった。ウワッと悲鳴をあげたのは私だったのか男の子だったのかはわからないけどとにかくみんなが驚いて、結果的に手は引っ込められたからちょっとだけ安心した。恐る恐る隣にいるキャプテンを見上げれば案の定いつも深い眉間の皺がさらに深くなってる気がした。ひーん、ごめんなさい、でもまだ出港の時間までには間に合いますよね? それとももう時間がやばい? 一瞬焦って時計に視線を向ければ約束の出航時間までにはまだ三十分あった。

「おじさん誰?」
「ヒッおじ、いやこの人はおじさんじゃないですあのというかこの人がおじさんなら私もお姉さんじゃなくて」
「お姉さんは何歳だろうがおれの恋人になる予定だからいいの」

 ヒッ、と青褪めた私に純粋な目をしながらよくわからない理論をまるで正論のように並べられて思わず口籠ってしまった。どういうこと。というか君が大きくなるの仮に待ってたとして私もその年数大きく、というか年齢は加算されるんだけどわかってるのかなこの子。いや淡い思い出になるのは確定だから別に良いんだけど。

「クソガキ」
「ウワッいたいけな子どもになんてこと!」
「お前は黙ってろ」
「ハイ」

 おじさんが地味に腹立ったんだろうか。普段の地味に紳士的なキャプテンなら無駄に子どもを煽ったりしないのに。慌てて止めても一クルーの私なんかのセリフじゃ止めきれなくてギロッと睨まれて黙り込むだけに終わる。ちら、とまっすぐに言葉と威圧を向けられてる子どもはわかってるのかわかっていないのかまっすぐ睨み返していて、すでに良い男になる片鱗を見せつけている。このキャプテンに恐れない気概だけでもう結構良い男だよ。

「おれは百人の海賊の心臓を海軍に提出したくらい強いし、医者だからもちろん賢い」
「は?」

 間抜けな音が溢れて男の子からキャプテンへ視線を移す。えっ何言ってんのこの人。

「それから、」

 まだなんか言うの。おじさん、って言われただけで大人気なさすぎるよ。相手は子どもだよ。呆れて顎が落ちたまま尊大に大人気ないキャプテンを見上げていればふと視線が私に落ちてきて瞬く。

「こいつとずっと一緒にいたおれの方が世界で一番こいつのことを愛してんだよ。何年経とうがクソガキが入り込む隙なんざねェ、わかったらとっとと帰れクソガキ」