タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

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2026/01/22 ロー
ひた隠した思いが裏目に出て・三日月で乾杯・君を背に乗せて太陽を目指そうか

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「黒足っていいよね……」

 好きな女が誰に聞かせるまでもなくうっとり夢見がちに呟いた言葉に心臓が凍りつく。ここが潜水艦の中で良かった。地上でその言葉を呟いていたなら、女のこととなると頭がおかしくなる黒足屋がすっ飛んできていたはずだ。あの男は本当に女が絡むと常識を超えた行動をする。涙が落ちる音が聞こえたことさえあるらしい。あの男なら本当にしてしまいそうだ。背筋が冷えて、潜水艦の窓の外を恋焦がれるように見ている女に近付く。

「…………今のは、離反の宣言か」

 想像していたよりも低く暗い音になってしまった自分の声に、本人すら驚いたのだから、ぶつけられたクルーはもっと驚いたはずだ。実際に、ぴょんと床から浮いてしまうほど驚いているクルーをじっと見下ろす。心臓が、動いていないのかと思うほど静かに冷え切っている。黒足屋のところに行きたいのか。おれを捨てて。キャプテンを裏切って。

「びっびっびっくりしたなもうキャプテンのバカ!! なんでそんな重たく考えるの! ちょこちょこ通えばいいだけじゃん!! 今までだって時々合流してるん、だ、し……」

 そうか。通い婚か。なるほどな。へえ。そうか。

「…………なんでそんなに機嫌悪いの」
「そんなに好きか」
「だって、楽しそうだし……」

 ああ、あの男は女を泣かせないためならなんだってやるからな。女のこととなると頭がおかしくなるが、基本的には頭が良くてノリもいいから付き合いやすい。蝶よ花よと可愛がられるのはそりゃあ楽しいだろうな。今のおれとお前みたいに無言の間だってできないくらいあいつはぺちゃくちゃ喋り倒す。喋るだけならおれだってやろうと思えばできる。でも喋るだけだ。医療のこと、家族のこと、話し出したら止まらない。でもそれはお前を楽しませることはできない。

「……浮気されて泣かされるのが目に見えるな」

 馬鹿みたいな負け惜しみを吐き捨てた。瞬間、気まずそうな表情がぽかんと間抜けな表情に変わってそれ以上の負け惜しみが口から出ることはなかった。信じられないことを言われた、みたいな表情だな。そうか、そんなにあいつのこと信じてるのか。おれだって本当はわかってる。あの男は確かに浮気はするだろうが、女を泣かせることはしないだろう。……そうだ、わかってるよ。あの男を選んだ女は幸せになるだろうよ。おれなんかよりよっぽど。

「…………キャプテンなんの話してるの?」

 俯いて地面を睨み付けていたおれにかけられた言葉に視線を戻す。不思議そうな表情でおれを見上げてくる女に、おれも戸惑った。なんの話、って、ずっと黒足屋の話ししてるだろ、おれたち。

「黒足屋のこと好きなんだろ」
「は? ……いや好きですけど浮気だなんだって言うことはキャプテンの思ってる好きって恋愛的なやつですよね違いますよ黒足のことそういう目で見たことないです」

 どこか焦ったように一息で紡ぐ勢いに思わず一歩後ずさる。それから言われたことを脳内で反芻して、胸を撫で下ろした。なんだ、そういう意味で好きじゃないのか。よか、いや良くないだろ。じゃあなんであんなにうっとりしてたんだよあんなの所謂恋する乙女でしかないだろ。

「黒足、空飛べるでしょ? あれすっごい楽しそうで羨ましいの。だからそろそろ勇気出して頼んでみようかなと思って。黒足は絶対断らないだろうし」

 空を飛ぶ? なんだ、それだけのことか。ちょうど潜水艦が海から上がったのを感じて、甲板に繋げていたものとおれとこいつを入れ替える。急に太陽の日差しに当たってくらつく女の腰をぐっと引き寄せて、ポケットに詰めていた小石を二つ取り出して空へ思い切り飛ばした。

「シャンブルズ」

 空を飛ぶくらい、おれでもできる。



「これ飛んでるんじゃなくて落ちてるんですけどキャプテンのばか──────────ッ!!」

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