タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/04/11
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「サンジくん、見て、綺麗でしょう」
にこにこと笑いながらおれの目の前に掲げられた海のような青が薄く透けるガラス製の綺麗な皿。綺麗だ。皿越しに薄く透けて見える嬉しそうなレディも、レディが選んでくれた皿も。綺麗でしょ、と言われれば、綺麗だね、と頷いて、それをレディが繰り返す。おれは飽きなくてもとうとうレディが同じ言葉を紡ぐことをやめてしまって少し残念に思いながら、皿をおれの目の前から下ろしたレディを見つめた。
「あげる」
「え」
お気に入りの皿を見つけられて嬉しかったからこんなにも見せてくれたんじゃないのかと一瞬呆けてしまったのがいけなかった。あれから、きちんと気をつけるようにしていたのに。そっと優しく皿を手の上に乗せられた瞬間、ガツ、と嫌な音がしてパリンッとおれの手の中で虚しくも青が砕け散る。さっと血の気が引いて顔色が青白くなった自覚はあるのに、ごめん、とすぐさま謝れずに唇を震わせる。視界に映るレディも美しい肌を青褪めさせていて、心臓も粉々に砕け散ってしまいそうなほどの罪悪感に襲われた。
レディの笑顔に癒されて、……いや、これだとレディのせいにしてるみたいだ。ただおれが悪い。外骨格のせいでかちこちに固まった体のことをおれはひとときも忘れちゃいけなかった。レディに触れるのも、物を触るのにも気を付けないと、そう意識して過ごしていたはずなのに。恋に浮かれたおれのせいでレディの優しさと心を傷付けてしまった。
「ご、ごめ」
「大丈夫?!」
ぱらぱらとかけらが床に落ちる音に意識を取り戻しておれが謝罪の言葉を紡いだと同時にレディのたおやかな指がおれの硬い手を掴んでギョッとする。慌てて力を抜いてさっきの皿のようにレディを外骨格で傷付けてしまわないようにつとめる。手のひらに乗っていたかけらがすべてその勢いで床に落ちて、破片でレディを傷付ける心配はなくても破片よりも何よりも今危険なのはおれの体で。
「怪我してない?!」
レディの言葉に瞬く間もなく掴まれた手をひっくり返したり戻したり動かされて怪我を確認されている。レディがあんなにも綺麗でしょうと繰り返したガラスには目も暮れず、ただおれの手をくるくると。
「れ、れでぃ、手、はなして、あぶないから」
「怪我は??」
「し、してない、おれは大丈夫だから、手、」
レディの手も床に落ちたガラス片のように傷付けてしまうのが怖いのに、心優しいレディはおれの手ばかり心配してくれる。無事を確認し終えてくれたのか青褪めた肌に血色が戻ってほんの少しだけ安心する。
「ごめん、せっかく、綺麗だったのに」
「いいの」
検分は終わったはずなのにいつまでも離れないレディの体温に気まずくなって俯きながら口を開いた言葉はすぐに否定されてまた口籠る。でも、あんなに綺麗だったのに、今では無惨に床に飛び散って粉々で。せっかくレディがおれに選んでくれたものだったのに、一度も使えなかった。
「でも」
「私はサンジくんにあの綺麗さを見て欲しかっただけだから、一度見てもらえただけで満足なの」
「……?」
皿は使うもので、見るものじゃない。いや、観賞用の皿もあるけれど。レディの言ってることが分からなくて気まずくて落ちていた視線をレディと合わせる。
「綺麗だったでしょう?」
小さな子どもをあやように優しい声で尋ねられて頷く。青が透けて海のようにきらめく綺麗なガラスだった。本当に綺麗で、砕けた今も光に照らされてきらきら輝いている。
「あれ、サンジくんが海を見てる時の目の色だよ。海の色が反射して、きらきらして、綺麗なの。サンジくんにも見てほしかっただけ。だから、綺麗だなって思ってもらえたならそれだけで満足なの。サンジくんが怪我しなくてよかった」
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