タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/04/12


 レディをエスコートするのは紳士として当然の務めでウキウキと心が浮き立つことはあれど、こんなふうに敵に誰かを人質に取られて手も足も出ないような焦燥感を抱くことはなかった。こんな気持ちははじめてで、目の前で柔らかく微笑むレディの手にこの震える指先が伝わりはしないかと心配になってまた余計に緊張する、そんな負のループ。心臓は小さな針に刺され続けているのかと思うほどちくちくと痛むし、いつも心の底から溢れる賛美がこの麗しきレディの前では口枷が嵌められてしまったのかと思うほど上手く言葉にできない。

「サンジくんって静かな人だね」
「そ、いや、そんなこと、は、」

 全く正反対のことを言われてしまうほど、レディの前に立つだけで言葉少なになってしまう。そうしてそんなふうに微笑まれて言われてしまえば、すきだ、きれいだ、そんな当たり前の言葉さえ言えなくなってしまう。だって、レディの前では無口な男になってしまっている。静かな人だね、その言葉を寂しげに言われたなら緊張がいつか解けていつものように言葉を紡いだとしてもレディはきっと笑っていつものおれと接してくれる、はず。だけど、その言葉を微笑ましげに言われているから、レディはきっと静かなおれのことを好印象に思ってくれていて、緊張が解けていつものラブコックなおれを取り戻した瞬間、幻滅されるに決まってる。

「かわいいね」
「れ、……なんでも、ない」

 レディの方がかわいい。
 そう即答したいのに、緊張でじゃなく幻滅されるという恐怖で自ら口を閉じた。レディは静かなおれを可愛いと思ってくださっている。可愛いよりはかっこいいの方が嬉しいけど、レディが褒めてくれるならなんだっていい。だけどレディが褒めてくれているのは、エスコートを震える指で拙くする口下手な情けない男で、手慣れたエスコートにレディを褒め称えるためなら海のように際限なく言葉が溢れるラブコックじゃない。

「ほんとにかわいい」

 ぎゅ、と唇を噛み締めるおれを見て再度レディから同じ言葉が放たれて思わず視線を逸らしてしまった。