タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/04/14
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「ぴゃあ」
「……」
「どっどどどうしてここに」
謎の奇声をあげて体内の水分全てを目から出してしまいそうな女を見下ろすのにももう慣れた。おれは慣れたが。視線を合わせればぼろりと大粒の涙が溢れる。
「ひぐっ、」
「お嬢さんはいつまで経っても慣れねェな」
「びぇえ、ごめんなさい」
訳がわからないなりに謝罪だけは素早い。呆れて笑えば更に怯える。変な女だと思った。押し付けられた見合いだがこの情緒不安定で挙動不審な姿を飽きるまでなら付き合ってやろうかと思って二、三度会うくらいには。おれに怯えるくせに断りはしないから面白くてちょっかいをかけるように次の約束を取り付けてしまう。その約束は明日のはずで、今日は偶然出会っただけだった。慣れねェな、とは言ったものの、さすがに出会う前から泣いていたことはない。不思議で眉が釣り上がる。
「今日はどうして泣いているのかね」
「え、それ、それは、その、」
ふと視線を感じて視線をあげる。眉を顰めておれと泣いている女を見ている男が少し遠目に見えてため息をついた。
「お嬢さんの涙の原因はあの男か?」
耳元でそっと尋ねればビクッと肩を揺らしながら控えめに頷く。おれが近付いたことによって怒りを増した男の表情に薄ら笑った。ひぐ、と喉を引き攣らせながら伝わせる涙を指で拭って腰を抱く。えっ、と素っ頓狂な声を上げて丸い目がおれを見上げた。驚きすぎたのか、とうとう枯れたのか止まった涙に思わず喉を鳴らして笑うおれの姿がそのまんまるの目に映る。
戸惑い続ける姿を見下ろすのも面白いが一応アレも確認しておかなければならない。さっき男が立っていた場所に視線を向ければ影も形もなくなっていて鼻を鳴らす。なんだこの程度か。つまらん。あの、あの、と狼狽える声に視線を戻す。
「さて、約束は明日だが、このあとの予定がないのなら食事にでも付き合ってくれるかね」
「で、ででも」
涙で赤くなった目尻をさすりながら聞けばまごつきながら視線をちらりと動かして何かを探している。さっきの男ならもういないが、まあ時間はあるし存分に探すと良い。緊張に竦ませていた硬い身体が腕の中でどんどん柔らかくなってようやく確認が済んだらしい。ぱち、と視線が再び合わさって思わず目尻を撫でていた指先が止まる。
「、あ、あの、た、助けてくれて、あり、ありがとうございました」
ふわ、と雰囲気が和らいで頬が緩んだ締まりのない顔を向けられる。今までずっと泣き顔しか見たことがなかったから一瞬何がなんだかわからなかった。笑顔。
「厄介な男に目を付けられるのが特技だな。今度の釣書にはそう書くと良い」
その今度はもう二度と訪れることはないが。
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