タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/04/30


「へへ」
「レディは本当にかわいいなァ」

 ぎゅ、とサンジくんの手を絡め取って笑ってもそれが呼吸をすることと同じかのように当たり前に受け入れてくれて笑い返してくれるから幸せいっぱいになる。覗きに命をかけるほどすけべな心に忠実に生きている人で鼻血もたっぷり出してしまう。だけど女の人に甘く優しいサンジくんは普通のお付き合いは本当に紳士でスマートで手を繋ぐくらいだったらエスコートで慣れているのか目をとろけさせて幸せいっぱいな表情になることはあれど私のように真っ赤になってかちこちに固まったりすることはなかった。サンジくんのように妄想豊かに鼻血を出したりそういう意味で戸惑うわけではないけれど、普通に好きな人と手を繋ぐという行為に慣れなくてサンジくんを驚かせてしまったのも今では懐かしい。照れ屋さんなレディも可愛らしいとくねくね崩れ落ちてくれて私が落ち込まないようにしてくれたのも優しくて、ゆっくりゆっくり慣れていった。かちこちに固まった体が動くようになっても、手を繋ぐだけで歩き方がわからなくなって下手な二人三脚よりもおぼつかない歩み方になってしまったり、サンジくんの体温に集中しすぎるあまり言葉を何も聞けなくなってしまったり、とにかく不自然な私に根気良く付き合ってくれたサンジくんは本当に優しくて良い彼氏だ。今ではもうかちこちに固まることなんてないし、胸が幸せいっぱいになることはあれどどきどきしすぎてサンジくんの声が聞こえなくなることもないし、周りに心配されるほど真っ赤に顔が染まることもない。ごく普通の、仲睦まじい恋人同士。

「サンジくんと手を繋げるのがうれしくて」
「はじめて手を繋いだときのかちこちに固まったレディも可愛かったけど、やっぱり笑顔のレディが一番魅力的だ」

 あのときの私を思い出されるのは少し気恥ずかしいけど、サンジくんが幸せそうに笑って私の頬も緩む。緩んだ頬をくすぐるように撫でられて思わずくすぐったさに首をすくめた瞬間、影が落とされて不思議に思う。

「じゃあ次はこれだね」

 ちゅ、と頭上で音がする。影が落ちたのは、サンジくんが私に覆い被さるように近付いたから。じゃあ、ちゅ、と音がしたのは、サンジくんの口が、私のおでこに触れた音……?
 ようやく繋ぐ手に、慣れたばかりだったのに。