タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/02
⚠️夢主の元カレの存在


「……すげェ情けねェこと言っていい?」
「なあに?」
「今のアレ、元カレ?」
「、」

 口籠るのが、最も悪手だと口籠った後に気づいてももう遅い。サンジくんの表情が、一瞬で曇った。何もやましいことなんてない。向こうだって、何も思ってないから話しかけてきた。サンジくんのことを彼氏だとも認識して、ちょっと挨拶して、たぶんもうこれから先は偶然に会うことだってない。やましいことなんて何もないのだから、そうだよ、と答えればいいだけだった。そうすればきっと、嫉妬はされるかもしれないけど悲しませることはなかった。
 サンジくんが気付くと思わなかったから。気付かなければ気付かないで余計な波風を立てることもないなと思っていたから。だから。
 そんなの全部言い訳で、もしもの話で、今現在サンジくんを傷付けていることだけが現実。

「レディは魅力的だもんなァ」
「サンジくん、」
「見る目あるぜ、あの野郎」
「ねえ」
「ああでもこんな素敵なレディと別れてんだから世界一の馬鹿野郎だな」
「聞いて」

 ぽろぽろと熱のない音で落とされる言葉の数々が私の言葉を全て遮る。レディの言葉を遮ることなんてない、レディがカラスは白だと言えばそうだねと頷くサンジくんが、私の言葉を聞いてくれない。元カレとは綺麗さっぱり別れてるよ、当たり前だけどもう好きじゃないよ、サンジくんのことが大好きだよ、サンジくんだけだよ、信じて。ぐるぐる思い浮かぶ言葉は全部本心なのに、薄っぺらい気がしてどうしようもなかった。
 サンジくんの言葉が止まっても、一体何を言えば良いのかわからなくて結局発言権はサンジくんのままで口が開く。

「おれのだよね? レディはもう、おれのだよ。ずっとおれの彼女。おれはあの野郎みたいにレディの元カレになんかならない。レディが別れ話をしても、土下座してでも何してでも縋り付くし、別れてなんかやらない。おれのだ」

 おれのだ、ともう一度呟いたサンジくんの片方しか覗けない目が、いつもより澱んでいた。