タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/03
⚠️夢主の元カノが出てくる


「相変わらず男の趣味が悪いわね」
「女の趣味も悪かったみたいだな」

 うふ、と笑う元カノと、ふん、と嘲笑う今カレに頬が引き攣る。やめてほしい。本当にやめてほしい。反射的に喧嘩売るのも喧嘩買うのもやめてほしい。

「……そのうちあなたの名前も彫られそうね、恋人の名前を彫るのはおすすめしないわ」

 上から下から舐め回すようにタトゥーを見つめてから呆れたように首を振られてなんと言えばいいのかわからなくなる。

「別れたら消すのに大変そうだもんな、おれたちは別れねェからそんな必要もねェが。ああ……消してやろうか?」
「違うわよ、普通にダサいから」

 彼女が馬鹿にしたように笑って、ぴく、とローの指先が動くのが見えて慌てて手を握る。そもそも彼女の体に私の名前なんて彫られていないし、ローにも私の名前は彫らせない。永遠にないことで喧嘩しないで。ばちばちと見えない火花が散っている二人に当事者のはずの私が口を挟めなくて口籠る。彼女は友達だった時も恋人だった時も恋人からまた友達に戻った今も私のことを過保護に心配してくれる優しい女の人で、決して私に未練があるわけじゃない。タトゥーまみれで武器まで携えた悪名高い男に、遊びなら容赦しないわよと威嚇してくれてるだけ。でもそれは彼女と付き合ったことのある私だからわかることで、見た目に反して私と真面目に付き合ってくれているだけのローの視点からだと私に未練のある元カノがちょっかいをかけにきているようにしか思えなくて苛立つのも理解はできる。感情の種類は違えど二人とも私のことを想ってくれていて優しくて真面目だからこそ起こった衝突に照れたり慌てたり狼狽したり感情の起伏が忙しくてどうすれば二人の喧嘩を収められるのかがわからない。

「本当に趣味が悪いな」
「この子の趣味が悪いからあなたは今そこに立ててるのに」

 吐き捨てるように言うローに、朗らかに笑う彼女に、思わずぷちんと糸が切れた。

「人のことを何度も何度も趣味悪いって……私は女の趣味も男の趣味も最高なの!」

 ばちばちと見えない火花を散らしていた二人の目が丸く見開かれて私を写す。握ったままの手をぐいっと引っ張れば普段なら私の力で引き寄せられるはずもないローが私のそばに素直に寄ってきてぎゅうと腕にしがみつく。

「見た目はそう見えないかもしれないけどすごく愛情深くて優しい人だよ。心配してくれてありがとう」
「別に心配してるわけじゃないわよ、趣味が悪いわね、って事実を言いにきただけ」

 きゅ、と眉根を寄せて素直じゃない言葉を吐くから思わず相変わらず優しいねと笑う。おい、と上から声が降ってきて笑いながら顔を上げればローも眉根を寄せていて、思わず本当にそっくりだなあと思ってしまった瞬間、頬が引き攣る。あ、こっちは本当に怒っていらっしゃる。勿論私たちの間にお互い未練なんて存在しないけれど、ローには伝わらなかった。やばい。捨てられる? 思わずひくついた頬にローの指が滑って焦る。

「おれに捕まった時点でお前の趣味が良いとか悪いとかはもう関係ねェ。これから先二度と他の男も女もお前の目には入れさせねェからな」