タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/07


「レディはどうしたい?」
「サンジくんはどうしたい?」

 いつもいつもレディファーストのサンジくんに特に疑問にも思わず今まで甘やかされてきたけれど、ふと唐突にサンジくんの意見が気になって言葉を返した。ぽかん、とサンジくんが片方しか見えない目をまんまるくさせていて、そのあどけない表情が見れただけでも聞いた甲斐はあったなあなんて小さく笑う。

「えと、レディの都合に合わせる、よ?」
「サンジくんの都合は?」

 尚も私の都合に合わせてくれるサンジくんを見て、なんだかその姿が可愛らしくていたずら心がむくむく育ってまた言葉を返してしまう。大きく開いた目はいつも通りに戻ったけれどうようよと彷徨いながらいつもと違うやりとりに焦る姿をじっと見つめる。たじろぐサンジくんに思わず笑って、ようやく遊ばれていることに気付いたのか困ったような照れ笑いに変わった表情に頬が緩む。

「お茶目なレディもかわいいなァ」
「ほんと?」

 いつもの調子を取り戻してこくこくと目をハートにして頷くサンジくんに一瞬しぼみかけたいたずら心が大きく育つ。

「どんなわがまま言っても嫌いにならない?」
「もちろんさ!」
「じゃあ今日のお出かけはサンジくんのやりたいことしよう」
「……へ」

 使命感に燃えたぎっていたサンジくんの目がまたこぼれおちそうなほど大きく見開いてにっこり笑う。いつも私のやりたいことばかり聞いてわがままを叶えてくれたり、時には聞かずに自然に叶えてくれるサンジくんのお願いを叶えてみたくなった。サンジくんからいつか聞いた、レディとデートできるだけでおれは幸せなんだ、はきっと心からの本心で、それ以上のお願いがないことはわかりきっている。何も思いつかないのかただ困りきっているサンジくんの表情はまるで迷子になった小さな子のよう。だけどそれでも聞きたくなってしまった。

「サンジくんはどうしたい? 私だって、サンジくんがどんなわがまま言っても嫌いにならないよ」

 サンジくんがわがままを言ったことなんて一度もないけれど、それでも念を押すためにきちんと言葉にすればへにょんと愛らしい眉毛が垂れ下がった。唐突な疑問といたずら心から始まった問答だけど、見つめる先の私が一歩も引き下がる気がないことを理解したのかもご、とむずがるように唇が動いて耳を澄ます。

「……じゃあ、その、……今日、はずっと一緒にいたい」

 だけど言われた言葉はあまりにも控えめで、というかいつも通りのことでしかなくて首を捻る。

「ルフィが騒ぎを起こしても、迷子のマリモを見つけても、チョッパーにねだられても、ナミさんやロビンちゃんに誘われても、……おれといてほしい」

 今度は私がぽかんとする番で思わず間抜けに口を開いたままサンジくんを見上げた。ものすごく大仰なわがままを言ってしまった、そんな後悔が滲む表情で、ものすごく控えめで謙虚なお願いを紡いだサンジくんに瞬くことしかできなかった。そのせいでサンジくんがやっぱりとんでもないわがままを言ってしまったんだ、なんてどんどん思い詰めた表情に変わっていて思わずサンジくんの胸に飛び込む。驚きながらも揺らぐことなくしっかり抱き止めてくれたサンジくんをぎゅうぎゅう抱きしめて見上げて狼狽するサンジくんと目を合わせた。

「それはわがままじゃないよ」