タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/03/09
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「サンジくんはあんまり自分の欲しいもの言わないよね」
えっレディおれが両手に取ってるもの見えてない? 今は買い物中で、どっちのフライパンにしようか悩んで両手に花ならぬ両手にフライパンなんだけど。あっ、おれが魅力的すぎておれ以外目に入らないよっていうレディの謙虚な口説き文句だったりする? それなら大歓迎。おれはいつだってレディの虜で、
「これはサンジくんの大事な料理に必要なものでしょ? 何か娯楽というか、趣味的に欲しいものはないの?」
あっ口説き文句じゃない。両手にフライパン持ってて良かった。危うくレディに飛びつくところだった。不思議そうにおれを見上げるレディに言われた質問を頭の中でもう一度繰り返す。娯楽、趣味。……エロ本? いやこれは言ったら嫌われるやつだろ。絶対言っちゃダメだ。
「女の人の裸がいっぱい載ってる本以外で」
「ヴぎッ」
言わなくてもバレてた。蛙を踏み潰したかのような音が喉で鳴って視線が泳ぐ。フライパンを持つ手に汗が滲んでる気がする。とりあえず置こう。
「……ええと」
置いて、ちら、とレディを見ればまだ会話は終わっていなかった。この会話から逃がしてほしい。もしくはちょっと時間巻き戻してほしい。そしたらエロ本のことに触れられる前にうまいこと誤魔化したから。誤魔化せたか? いや、誤魔化す。レディの口から女の人の裸がいっぱい載ってる本とか飛び出させてしまったことを意地でもどうにかなかったことにさせる。そんな現実逃避をしてたって過去になんて戻れるわけなくて、惨めに呻くだけ。
「サンジくんって本当に欲がないよね」
その言葉に思わず首を傾げる。エロ本持ってるの知られてるのに? なんでエロ本持ってるの知られてるのかはわからないけど、おれのロッカーは欲代表って感じのパラダイスだ。まあいいように思われてる分には否定せずにへらへら笑って誤魔化す。
「私が今飲んでるジュース、あと一口しかないのにプレゼントだよって言って渡したらすごく喜んでくれるでしょう?」
「えっそりゃあもちろん!」
だってそれって間接キスってことだろ。最高にも程がある。えっくれるの? あっくれないですかそうですよねそんなうまい話があるわけがない。一喜一憂するおれを見て呆れたように笑うレディにバツが悪くてまた視線を泳がせる。
「こないだのサンジくんの誕生日にあげたプレゼントの時と同じくらい喜んでくれるよね」
「え」
「サンジくんのために選んだプレゼントと、そうじゃないもの、同じくらいに喜んでくれる」
悪いことじゃないよ、と笑うレディ。
笑った、と思う。呆れも怒りも悲しみも混ざってなかった。笑っただけ。なのに初めて見る表情で、泳いでいた視線がレディのその表情に釘付けになって、何も言えなかった。
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