タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/05/15
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「笑って、サンジくん」
プリンスたるものレディのお願いは返事をする前に叶えるべきだ。だから目の前の綺麗な瞳にはにっこり笑うおれが映っている、はず。だって目の前に立つレディがくすくす愛らしい声で笑ってくれてるから。みっともない感情を押し潰してちゃんと笑えてるから、だからレディも笑ってくれてる。いつもそうだった。おれが笑えばレディも笑ってくれて、レディが笑えばおれも嬉しくて。だから、だから、笑えてるはずなんだ。
「ブーケはサンジくんに投げるから、ちゃんと受け取ってね」
レディしか目に入っていなかったおれの視界に強制的に割り込んできたのは白い花束。その花束はレディの白く輝くドレスをよく引き立てていて、心とは裏腹に勝手に体は動いて頷いた。レディのお願いを断るはずはない。だから頷いた。だけど心はぐちゃぐちゃに引き裂かれているような痛みを感じて今にも嫌だと叫び出してしまいそうだった。だって、知らない男と誓いのキスをして、それから次の幸せを掴み取るための花束をどうしておれが受け止めなくちゃいけないんだ。そのブーケをレディの願い通り受け取っても次の幸せなんておれにはこない。だっておれの幸せである君が、誰か知らない男に盗られたから。盗られた、だなんて、おれのものですらなかったのにそんなことを考える醜い思考に吐き気がする。レディはレディ自身のもので、誰のものでもなかった。だけど今からは、あと数時間もしないうちに君は誰かのお嫁さんになってしまう。
「レディはいま、し、あわせ?」
それでも君が幸せなら、それならおれも幸せなはずだから。おれの言葉ににっこり笑うレディに胸が傷付いて、だけど安心した。
「そうでもないかな」
はず、だったのに。レディの返事に時間が止まった気がした。レディは美しく微笑んだまま、なのに、幸せじゃないと言う。白く輝くドレスを着るレディは世界中で一番の幸せをまとっているはずなのに、綺麗な笑顔を浮かべたまま否定をする。どうして、と言葉が漏れた。どうして。
「レディが、し、しあわせに、なるなら、それなら、って、そう思ったのに、しあわせじゃ、ないなら、どうして、おれのほうが、レディをたくさん、わらわせてあげられる、のに」
小さな子どもの癇癪のような、幼稚な言葉ばかりが勝手に口から溢れ出てしまう。だって、レディは幸せだと思っていたのに、そうじゃないと聞いてしまったから。幸せじゃないならどうして。どうして、と喚くおれをただ優しい目が見ている。
「そんなこと言われてももう手遅れだよ」
ひゅ、と息を呑む音が大きく響いて固まる。
「着る前に言ってくれたらよかったのに」
片手にブーケを携えたまま反対の手でドレスの裾をつまみあげたレディが肩をすくめてそれはそれは美しく笑った。
着る前に言えていたら、何かが変わっていた?
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