タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/16


 がつん、と何かにぶつかって目の前に星が散る。悪い、とゾロの声がして口の中に血の味が広がって呻いた。

「い、いたい……」
「わる、い」

 怪我というのはどうして血を認識してからの方が痛く感じるんだろう。最初は星が散っただけだったのに、血の味を舌が感じとってしまってからの方がじくじくと痛みだして涙まで滲み出てしまう。ゾロが慌てた声を出したのが聞こえたけどそれを気にする余裕すらなかった。んえ、と口の端から血が流れ出たのを感じて手で拭い取ってみればやっぱり手が真っ赤に染まっていて涙が溢れる。

「いたい」
「わ、悪かった!」

 ええん、と泣き出してしまいたくなる痛みにうずくまれば普段は何にも動揺したりしないゾロが本格的に慌て出してうずくまった私を軽々と抱き上げて驚く。だけどぶつかっただけで流血し涙を流す私が情けなさすぎて、ゾロの肩口に顔を埋めてその情けない顔を見られないようにする。口の中に血が広がってひんひん泣く私を簡単に抱き上げてすごいスピードで走り出したゾロがどこかの扉を開けた音とチョッパーの声が聞こえたことによって保健室に担ぎ込まれたことを悟る。チョッパー、手当て!と叫んだゾロに思わず顔を上げれば潤んだ視界でもチョッパーがギョッと目を剥いたのがわかった。そんな表情になるほど私の口元がひどい惨状になってるらしいことに余計に痛みが増した気がしてぼろぼろと涙が溢れる。椅子に座らされて医者の顔をしたチョッパーが私の口を開いて白いガーゼを押し当ててくれる。

「唇と、あとちょっと口の中が切れてるけどこれくらいなら薬もいらねェよ、大丈夫。今は痛くてびっくりしてるだけだから、ゾロもそんなに心配しなくて大丈夫だ」

 口の中にガーゼをつっこみながらも泣く私を器用に撫でてあやしてくれるチョッパーの態度と言葉に安心して痛みも緩和してきた気がする。まだ痛いけど、チョッパーがそういうなら大丈夫な気がしてきた。血のついていない方の手で涙を拭ってようやくゾロにごめんねと向き合おうとした瞬間、チョッパーが口の中のガーゼを取り替えてむぐ、と呻く。

「ゾロの出血は唇だけか? 自分で止血できる?」
「いや、おれは、」

 チョッパーが私の頭を撫でていた手を離してからもうひとつガーゼをゾロに差し出して固まる。不思議そうに首を傾げながら見上げるチョッパーの視線を追って見たゾロの唇には確かに真っ赤な血が付着していて、だけど、

「これ、は、おれの血じゃねェから、大丈夫だ」

 血が目立たないほど真っ赤に染まったゾロと目が合って、涙が出るほどの痛みが一瞬で消え去って体温が急上昇したのがわかった。