タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/20


「次はいつ黒足屋たちと合流するんですか?」

 ベポと航路の計画を立て終えたおれにいそいそと近付いてきて問われた言葉に眉を顰めた。そんなおれには一切気付かずクルーはおれの手に丸められている地図をきらきらした目で見つめている。これが広げられていたところで全く知識もないからわからないくせに。

「ねえねえキャプテン次はいつ、」
「うるせェ」
「ウッワ機嫌悪」

 ドスの効いた音に対して機嫌が悪いということは理解できるのに、女の口から出た言葉はまるで何も考えていない馬鹿げた音だった。茶化してるつもりはない、はずだ。ただ本当に、おれの機嫌が悪い事実を何も考えずに口にしただけ。

「ベポと喧嘩しました?」
「違う」
「じゃあ海が荒れそうなんですか?」
「違う」
「梅干し見つけちゃいました?」
「あ?」

 全く関係のないことばかりあげつらうクルーに否定していけば唐突に耳に入ってきた嫌いな食材に反射的に眉間の皺を増やしてしまった。原因を見つけたと言わんばかりに輝いた笑顔が少しだけ申し訳なさそうに変化して目が合う。

「誤解させてごめんなさい、アレ別にキャプテンに食べさせようとしてるわけじゃないので安心してください」

 いや、なんの話だ。機嫌が悪くなった原因は別に見つけてもいない梅干しじゃねェよ。訳がわからないせいで更に険しくなっているはずなのに、原因を突き止めたと思い込んでいる女の表情は反対に晴れやかになっていく。

「黒足屋の料理ってなんでも美味しいじゃないですか?」
「あ゛ぁ?」

 原因じゃなかったはずの話題が原因に近付いて今日一番の低い声が出た。にも関わらず、一度納得した女の耳には届いていないのか頬に手を当てて幸せそうに頬を緩ませていて全く気付いていない。

「だいたいなんでも完璧なキャプテンがすっごく梅干し嫌うから私も食わず嫌いしてたんですけど、黒足屋が出すものってごはんでもパンでもデザートでもなんでも美味しいからちょっと挑戦してみたんです。そしたらもう、すっ……ごく美味しくて! だから分けてもらったんです」

 きらきら輝く瞳はおれの目をすり抜けていて、視線が絡んでいるはずなのに目が合わない。その目は今この瞬間を見ず、きっとその時のことを思い出している。思い出したことで涎が口の中に溢れたのか、ごきゅん、と喉を鳴らして瞬いた女とまた視線が絡み合っても嬉しくはない。だって次に言われる言葉はわかりきってる。どうせまた冒頭の話に戻るだけだ。

「次はいつ黒足屋たちと合流す、」
「しばらく合流しねェ」

 ほら見ろ。わかりきってたことだ。食い気味に否定したおれの勢いに目を丸くして、それから情けなく垂れ下がった眉におれの方がこいつをいじめているような気分になって目を逸らす。いじめられているのはおれの方だ。なんで好きな女が他所の男に会いたがる言葉を聞かなきゃいけないんだ。恋愛感情じゃねェ、違うはずだ、食い物に釣られているだけ、きっとそうだ。そうだとわかっていても面白くない。

「貰った梅干しがなくなるまでに合流できるといいなあ」
「梅干しも食うな」
「え」

 悲しみつつも素直に言うことを聞くクルーに頭に血が上って冷静じゃなくなった口が勝手に言葉を紡ぎ出す。やばい。不思議そうにおれを見上げる女に、また勝手に口が開く。閉じねェと、

「お前にキスができなくなる」
「え、」