タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
⚠️サンジくんの元カノの概念
2022/05/21


「元カノはこうしたら泣き止んでくれたの?」
「も、」

 とかの。
 ぐすぐすと泣いてるレディがようやく意味のある言葉を紡いでくれて安心したのも束の間、頭の中でその単語を噛み砕いた瞬間固まる。レディが夜の静けさに隠れて泣いていた。だから、優しく涙を拭って、出来る限りの心からの言葉を贈って、手を引いておれの城まで着いてきてもらって、夜の海で冷える体に毛布をかけて、そして流した水分を取り戻してもらうために飲み物も飲んでもらって、大事な宝物をもう誰にも傷付けられないように腕の中に囲い込んで、また心からの慰めの言葉をたくさん紡いで、撫でて、撫でて、撫でて、はじめて聞いたレディの言葉がそれで固まってしまった。
 ひぐ、と引き攣った喉の音がして慌てて硬直していた体をどうにか動かして撫でるのを再開する。ぐるぐる頭の中で考えてもレディの言葉を飲み込めない。
 元カノはこうしたら泣き止んでくれたの?
 わからない。どう言えばレディが泣き止んでくれるのか、どうすればレディが傷付かない言葉をかけられるのかがわからなくて、結果的にレディの言葉を無視してしまっている現状に焦る。なんでもいいから答えないと。いや、なんでもよくはない。

「面倒な女でごめんね」
「そんなことねェ! あっ、いや、そんなことない、ほんとだよ、レディのことを面倒だなんて思ったことない」
「知ってる、……サンジくんがレディのことを悪く思ったことがないの」

 腕の中に閉じ込めている君のことを言ったのに、当人が紡いだレディの単語はこの世に生きる全女性のことを含めているんだとすぐにわかった。確かにそれは事実ではあるけど、今おれが抱いているのは君だけで、君に向けて言ったのに。この溢れんばかりの愛が伝わらない歯痒さにまた正解がわからなくなる。ぐす、と止まらない涙の原因はおれで、この涙を止める権利をありがたくも獲得したのもおれ。なのにいつまで経っても涙を止めることのできない不甲斐ないおれに腹が立つ。

「夢を見て、」
「ゆめ?」
「サンジくんが他の女の人と幸せそうに笑ってる夢を見て、悲しくなって、嫉妬して、泣いて、理不尽な八つ当たりをする私が悪いの」
「君が悪いことなんてひとつも、」
「みんなに優しいサンジくんが好きなの。幸せそうに笑うサンジくんが好きなの。その気持ちは本当なのに、サンジくんと一緒にいると、苦しい」
「、」

 ごめんね、と謝る必要のない謝罪をこぼして止まらない涙を流し続けるのはこの世で一番幸せにしたいはずの女の子。