タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/23


「あ、ゾロだ」

 こんなところでどうしたの?といつもと変わらない笑みを浮かべた女の体は、いつもと違って至る所が包帯まみれで混乱する。最早服のように思えるほど隙間なくその白い時折赤黒い布が巻き付けられていて息が詰まる。また迷子?と笑われてそれに答える間もなく、ふと気付いた時には腕を掴める距離にいた。唐突に手首を掴まれて、不思議そうに見上げる顔にも小さな傷がそこかしこについていて混乱がおさまらない。

「お、まえのほうこそ、どうした」

 掴んだ手首にも布が巻き付けられていて、今更ながらに強い力で掴んでしまったことを後悔する。慌てて力を緩めて答えを待っても不思議そうに首を傾けるだけでおれの言葉は心の中で思っただけで音にならなかったのかともう一度呟いた。今度は届いたのか考えるように何度か瞬くその目をじっと見下ろして焦れる心をどうにか落ち着かせながら待つ。ぱ、と顔が輝いてようやく答えが聞けると耳を澄ます。

「あ、そうだ見て、この間のゾロとお揃い」
「、」

 なのに、嬉しそうに見せびらかしながら紡がれた言葉はまっすぐにおれを突き刺して息を呑んだ。この間の、おれ? なんのことだ、おれがいつ、こんな、……否定しようとして、できなかった。心当たりしかない。ほとんどは返り血だが、時折自分の血で体を真っ赤に染め上げてチョッパーに動きにくくされる。酒を飲んで一日寝てりゃ治る傷だ。顔面を蒼白にさせて怪我しないで、と嘆くこいつに大袈裟なんだよと笑ったのは記憶に新しい。だけど、だけど違うだろ。おれは一日で治る。チョッパーにだって化け物じみてる回復力だなと呆れられながらも太鼓判を押してもらって毎回きちんと完治して、そもそもおれは戦闘員で、怪我はつきもので、でもお前は違うだろ。おれたちの仲間で立派な海賊で、自分の身を守れるくらいの振る舞いはできてもそれ以外はごく普通の女で、戦闘員なんかじゃなくて、おれの後ろで、おれが守って、お前が怪我なんてするはず、なくて。

「だ、れに、やられた」
「大袈裟だなあ」

 言葉に詰まりながら紡いだ言葉にからころと笑われる。カッ、と頭に血がのぼって、急激に冷えたせいでふらついた。頭に血がのぼったのは、心配を無碍にされたと思ったから。急激に冷えたのは、今までその仕打ちをおれがしてきたことに気付いたから。心配する資格も、怒る資格だってない。足元が崩れ落ちるような気がしたのは錯覚なんかじゃなくて、本当に地面に膝をついてしまったようで目の前の女が心配する声が聞こえたけどそれに返事をする余裕なんてなかった。それでも、もう二度とこいつを誰にも傷付けさせまいと固く誓って、意地でも掴んだ手首は離さなかった。