タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これの続き
2022/05/28


「起きたか」
「ぎ、」

 ぎゃあ、と可愛らしさのかけらもない悲鳴をどうにか飲み込んだ。見知らぬ部屋の、見知らぬキッチンに、ローが立っていた。

「ろ、ろろ、ろーが、なんで」
「なんでも何もおれの家だからな。家主がいるのは当然だろ」

 わざとらしく肩をすくめながらため息をつかれる。ばくばくと動く心臓を押さえながらキッチンから私の方へ近付いてくるローをただ見ることしかできない。何をどう聞けば良いのか、働かない頭では考えられなかった。

「覚えてねェのか」
「なっ、な、な、なにを、」

 ローの珈琲を持っていない方の手が浮いて身構える。ぎゅ、と目を閉じた私の頬に、つい、と指が滑った感触がして飛び跳ねる勢いで一歩下がった。ふん、とローの笑った声が聞こえて指が滑った頬に手を当てながら恐る恐る目を開く。私の頬に滑らせた手はいつの間にかもうひとつマグカップを握っていてそれを差し出されたから思わず受け取って、ローを見上げる。

「覚えてねェならそれでいい」
「え、」

 だから、何を。そう聞きたいけど、聞きたくない。そんなジレンマを抱えながらローを見上げてもいつも不機嫌そうな顔がほんの少し笑みに傾いて目が泳ぐ。

「ね、寝、った?」

 だけど、はっきりさせた方がいい。頭ばかりがずきずきして体に違和感はないけれど、それでも何があったかをきちんと把握してからじゃないとこの、いつも私が飲んでいるものより高そうな良い匂いのする珈琲を心から味わえない。

「さすがに徹夜はしてねェよ」

 どっちとも取れる曖昧な言葉にうぐぅと呻く私に喉が鳴った音がローからして揶揄われていることを悟っても、それでも事実は確認したいから言葉を探す。

「……そうじゃなくてその、性的、なこと、をその、」

 ぶは、ととてもあのローから発生したとは思えない吹き出す音が聞こえて肩が揺れる。珈琲をこぼさないようにしつつもお腹を抱えながらくつくつ笑うローに固まって、それから怒りか羞恥かわからない体温の上昇を急激に感じる。揶揄われてる。ここまで遊ばれるってことは、多分、やってない。

「昨日は何もしてねェよ」

 笑い終えたローからもきちんと否定されて胸を撫で下ろす。まさかローがこんな悪趣味な揶揄い方をするだなんて。悪趣味だ、と自分が記憶を飛ばすまでお酒を飲んでしまったことを棚に上げてローを責めようと口を開いたのに、顔を上げたローと目があってまた頭が真っ白になる。

「だがまあ、お前にとってそういうことをするかもしれない対象におれが含まれてると分かっただけでも大収穫だ」