タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/29


「あれ?」
「あら」

 風が運んできた香りに振り向けば、どうしたの?と微笑むロビンちゃんが少し後ろに立っていて首を傾げたまま瞬く。すんすんと鼻を鳴らしながらロビンちゃんに近付いて確信する。

「ロビンちゃんからナミちゃんの匂いがす、る?」

 確信したけど、頷いて欲しくなくて言葉尻があがる。そんな私にいつもの微笑みを讃えて否定をしないから、どんどん視線が下がって近付いていた距離を離した。だって、ロビンちゃんから、ナミちゃんの匂いがする。そんなの、やだ。
 ……やだ?
 どうしてそんなふうに思うんだろう。ナミちゃんとロビンちゃんと私は仲良しだ。海賊なのに、普通の女の子たちのように仲良し。ナミちゃんも、ロビンちゃんも、ふたりとも大好きで、だから嫌だなんてそんな否定的な感情が浮かぶはずがないのに胸がざわついて仕方がない。嫌なざわつきにこれ以上そんな気持ちにさせる匂いに触れたくなくて後ずさるのに、ロビンちゃんの美しい足がこつこつと私を追いかけてきてとうとう船縁にまで追い詰められてしまった。

「どうして離れるの?」
「わ、わかん、ない」

 俯いたままぎゅっと目を閉じた私に上から言葉を降らせてくるロビンちゃんに首を振る。目を閉じたせいでさっきよりもはっきり鼻をくすぐる香りに、ロビンちゃんと話しているはずなのにナミちゃんが目の前にいる感覚になって頭が混乱する。やだ、いやだ、……どうして? わからなくて、余計に胸が苦しくなる。
 ふふ、とロビンちゃんが笑った声が耳に届いて恐る恐る目を開いて顔を上げた。私が訳もわからず混乱してるのが面白いのか、楽しそうに笑うロビンちゃんに戸惑いながら首を傾げる。いつもならロビンちゃんが笑ってくれるのが嬉しいけど、今はただ胸が痛くてどうすればいいのかわからない。

「この香りは好みじゃなかったかしら?」
「そ、んなことない。ナミちゃん、いつも良い匂いで、でも、」

 でも、ロビンちゃんからナミちゃんの匂いがするのは、いやだ。
 そんなことは言えなくて言葉を飲み込む。だって、自分でも理解が追いつかない何かをぶつけられるロビンちゃんが可哀想だ。

「ナミに借りたの」
「う、ん」

 また、胸がざわつく。

「あなたも知ってる通り、ナミに物を借りるのは対価がすごいじゃない?」
「そ、うだね」

 ナミちゃんは確かに守銭奴だけど優しいから私たちには特別価格。それでも貸しは確かにつく。そんなに高くつくと理解していてなお対価を支払ってまで香水を身に纏ったロビンちゃんの行動にまた胸が痛くなる。

「あなたが何も反応してくれなければ懐の痛い買い物だったのだけど……こんなにも可愛らしい反応をしてくれるだなんて」
「え、?」

 ロビンちゃんの言葉の意味がわからなくてただただロビンちゃんの目を見つめることしかできない。

「嬉しいわ」

 いつもの微笑みが眼前に迫って思わずその眩しさを直視できずにぎゅっと目を閉じた私の唇に、柔らかな何かが触れた。