「スモーカーくんって良い男すぎて逆にモテないよね」
「ああ? どういう皮肉だそりゃ、遠回しすぎて訳がわからん」

 もくもくと煙を燻らせて私に視線だけを寄越すスモーカーくんににっこり笑う。ほらそういうとこ。一応仕事中に、スモーカーくんからしたらくだらなすぎることを呟いたのに会話に乗ってくれるところだとか、とっつきにくそうに見えるのに案外おしゃべり好きで同期の私とヒナちゃんと他愛もない会話をしてくれるところだとか、あの大きな図体でたしぎちゃんのような見所のある後輩に対する細やかな配慮や気遣いをするところだとか、挙げればキリがない。

「皮肉じゃなくて、そのままの意味だよ。スモーカーくん、かっこよくて強くて優しくて良い男なんだけど、良い男すぎて逆に私なんかじゃ釣り合わないよね……って勝手に傷ついちゃって告白するまでに至らないってこと」
「へェ」
「興味無さそう」
「そりゃな。勝手に好きになって勝手に自分を卑下して勝手にやめるやつのことは興味ねェ」
「まあスモーカーくんはそうでしょうとも」

 そういうまっすぐなところもかっこいいところだよね、と笑いながら頷く。スモーカーくんはきっと、おれなんかじゃ釣り合わねェ、なんて儚い気持ち、何回生まれ変わっても理解できないと思う。豪快に前に突き進むだけだもんね。そんな姿がいろんな人を恋に落として、そして言葉通り勝手に諦めてられてるだけ。スモーカーくんは何も悪くない。

「お前は?」
「ん?」
「お前もそういう訳わからん感情になったことあるのか」
「あるよ」
「へェ」
「興味無さそう」
「そりゃな」

 同じ会話を繰り返したことがなんだかおかしくなってくすくす笑う。スモーカーくん、見た目に反してこういう本当にくだらないとしか言いようのない会話にも付き合ってくれるから本当に良い男だと思う。

「おれには関係ないからな」
「そうでしょうとも」

 うふふふ、と声を上げて笑ってしまった。関係ない。そう。私が勝手にあなたを好きになって、勝手に私なんかじゃ釣り合わないなと思って諦めて、それでもいつか、……せめてずっとあなたの側で戦い続けられるようにと足掻く、そんな大それた夢を描いて前に進み続けているのは私の勝手でしかなくて、スモーカーくんには関係ないこと。

「おれが待ちくたびれて捕まえようと動くのも、お前には全く関係ねェ」
「え?」

2021/01/12