探偵の策略


「ねえ…これって火事じゃないよね?」
「ああ…多分ベルモットが仕掛けた発煙筒か何かだろう。ベルモットは、自分がこの列車の中に居ることを灰原に気付かせ、蘭や子供たちから引き離す…あとはバーボンに任せてるみてーだな」
コナンは携帯を取り出すと、ひと呼吸おいて有希子へと電話を掛けた。
「母さんやべぇぞ!!灰原がどこにもいねーんだ!母さんの所に行ってねぇか!?」
『こっちにも来てないわよ!前の車両に避難したんじゃない?人ごみに紛れ込めば姿を隠しやすいし!』
「じゃあ前の車両に行ってみっから、母さんは作戦通り上手くやれよ!」
『OK♪』
コナンは通話を切ると、ニヤリと笑った。
「安室さんのこと言えないんじゃない?さすが大女優の息子、演技が上手い事で」
「るせ…。…安室さん、ちゃんと合流できたかな…?」
人混みの中、コナンは立ち止まると、小鳥と共に後方車両を見つめた。


「爆弾で連結部分を破壊し…貨物車が止まった所で僕の仲間が君を回収する。それで君はめでたく監獄入りって訳さ」
「おいおいおいふざけんな…なんで俺がこんな目に…」
「小鳥さんのお尻を触ったバツですよ」
一見すると、バーボンが灰原を貨物車に追い詰めたような図に見えるが、それは全く別だ。灰原の恰好をしたキッドである。
「据え膳食わぬは男の恥って言うだろう…目の前に良い尻があったら触らねぇと男の恥だ」
「前から思ってたけど、君って結構スケベキャラだよね」
安室は、キッドへと拳銃を向けたままため息をついた。キッドは笑みを浮かべながら貨物車内を見回す。何となく白い布を捲った所で、ぱっと表情を変えた。
「どうした?」
「この貨物車…爆弾だらけだ」
「何!?」
「どうやら段取りに手違いがあったみてーだな…」
キッドは貨物車内を歩き、白い布を全て捲っていく。俗にC4と呼ばれる爆弾が無数に設置されていた。
(おかしい…到着駅の名古屋ではジンが待ち構えているはずだ…もしかしてベルモットはシェリーがジンの目に触れる前に殺すつもりか…?是が非でもって事だな…)
安室は貨物車内の爆弾を確認しようと一歩足を踏み入れる。しかし灰原に扮したキッドは、両手で彼を外へ押し戻した。
「な、何を…!」
「悪いが名探偵から頼まれててね。アンタはアンタの仕事をしな…!」
言うが早いか、キッドは貨物車の扉をぴしゃりと閉める。安室は反論しようとした瞬間、背後に人の気配を感じ振り返る。
「…ベルモット…?」
煙で良く見えないが、ここまで来るのは彼女以外ありえない。
「邪魔しないでもらえますか?彼女は僕が…!!」
追い返そうとすれば、貨物車との連結部分に手榴弾が投げ込まれ、安室は蒼白する。同時に、この人物がベルモットではない事が分かる。
「誰だお前…まさか!?」
予想外の人物に目を見開けば、その瞬間爆発が起こった。


大きな爆音に小鳥は開いた窓から後方を覗いた。連結部分で切り離された貨物車は橋の上で停車している。作戦は上手く行ったのと安心した瞬間、貨物車は爆発し黒煙を上げ始めた。
「!?あ、…零さん!!」
「おい、小鳥!?」
コナンが静止するも、小鳥は振り切って人の波をかき分けて走る。息を切らせながらなんとか7号車までくると、急に腕を引かれ、個室へと連れ込まれた。
「な…なに?誰…?」
「まさか貴女の方からこっちに来てくれるなんて…逢いに行く手間が省けたわ」
その声に恐る恐る視線をあげると、妖艶な笑みを浮かべるシャロン・ヴィンヤード――ベルモットが立っていた。
「本当はもっと早く逢いたかったんだけど、バーボンのガードが固くて困っちゃうわ…。ちょっと失礼」
ベルモットは腕を伸ばすと、小鳥の襟元を引っ張った。ボタンがはじけ飛び、清楚な下着に包まれた胸元が露になる。慌てて隠そうとする小鳥を静止して、ベルモットは彼女の胸の谷間に何かを押し込んだ。
「…アラックからの預かりもの、確かに渡したわよ」
そう言い残し彼女は部屋を出ていく。小鳥も後を追おうと直ぐに部屋を出るが彼女の姿は既になかった。

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