宣戦布告
「小鳥、小鳥」
「わ、零さんどうしたんですか?料理中は危ないから駄目って言ったじゃないですか」
突如後ろから抱きしめられ、驚いた小鳥は不満げに頬を膨らませて振り返る。しかし降谷は構うことなく小鳥の肩口に頭を埋めた。やけに甘えたな彼を見て、小鳥は不思議そうに首を傾げた。
「本当にどうしたんですか?」
「小鳥不足…」
「ずっと一緒に居たじゃないですか…」
「ムラムラする…」
「今はちょっと無理ですね…」
そう言いつつ小鳥は鍋をかき混ぜる。ホワイトソースのいい香りが降谷の鼻孔を擽った。
「グラタン?」
「はい、ほうれん草とサーモンを入れてみました」
「へ〜美味しそう…これ、バゲットに焼いてもうまそうだな」
「零さん、ナイスアイデア…今度やってみます」
降谷は小鳥の頬にキスをしてから身体を離す。そして棚に手を伸ばしグラタン皿を出した。
「他に出すものあるか?」
「あ、サラダも作るので大き目のお皿もお願いします」
「了解」そう答えると、もう一度棚に向かい、サラダ用のボウルを手に取った。
「なあ…」
降谷はボウルを抱えたまま、何か言いたげに口を動かす。ハッキリしない彼の動きに、小鳥は訝し気に首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「…今でも俺に復讐は似合わないと思うか?」
その質問で小鳥は納得がいった。先日のミステリートレインの中で、赤井らしき男を見たと話は聞いて居たが、コナンに問いただしても「教えない」の一点張りで彼女自身も頭を悩ませていた。降谷にとって赤井秀一は親友の仇にも等しい。そう簡単に赤井に抱く憎悪を消せるわけもないのだ。小鳥は少し考えると、重く息を吐いた。
「そうですね、似合いません。復讐を遂げたいと言うのなら私は見守ります。でも、それは――きちんと話をしてからでも間に合うと思いますよ」
「きちんと話をしてからーー…か。あ、そう言えば」
降谷は少し目を逸らして息をついた後、思い出したように首を傾げた。
「ベルモットから貰ったUSBの中身、見たか?」
「…まだですけど…なんか開くの怖くて」
「ウイルスとか入ってる可能性もあるからな…小鳥が良ければウチの連中にチェックさせるが…」
「あ、じゃあ後で持ってきます」
あのUSBは帰宅後ハンカチに包んで棚の上に置いてある。下手に開けてこちらの情報を持っていかれても困るからだ。――とは言ってもレポートや講義で使う資料のみで別に盗まれても困る情報などは入っていないのだが。
「私の素人推理ですけど…その赤井さんって生きてるんじゃないですか?」
「何故、そう思う?赤井はあの時頭を撃たれた…まさか空砲と同時に血のりが噴き出す仕掛けのついたニット帽なんて売って無いだろう?」
「そうですねぇ…売って無いですよね。でも私、それを可能にする人一人知ってますよ」
小鳥は心の中で天才高校生と称される幼馴染へ宣戦布告をする。赤井秀一の事について自分に教えないのが彼の判断なら、自分はそれに対抗して徹底的に調べ上げよう。
――勝負だ、工藤新一くん。
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