正義のミカタ
アメリカは銃社会だ。一般の家庭にも普通に銃はある。護身用に銃を持つ人だっている。しかし彼女は、一度も銃に触らなかった。「それ」は人を殺す道具だと心のどこかで恐怖していた。
彼は銃口を向けられても動じず、小鳥へと伸ばした手を戻すこともしない。
「小鳥さん、それはダメです。そんな事しても、何にもなりませんよ。」
「…貴方たちだって、私の父さんを殺したじゃ無いですか。」
「嘘を、ついて…騙していたことは謝ります。でも今は、それを下してください。――貴女が、手を汚す必要なんて無いんですよ。」
そっと小鳥の手を取り、拳銃を握った指を一本ずつ外していく。力がなくなった手から滑り降ちたそれを、彼女はもう握ろうとはしなかった。安室は膝をついて小鳥へと凭れ掛かる。両手で彼を抱きとめると、生暖かいものが触れる。それが彼の血だと気が付けば小鳥は青ざめた。
「安室、さん…やだ、しっかり…しっかりしてください!」
彼女の悲鳴のような声に気が付き、現場の指揮を執っていた男が駆け寄る。
「降谷さん!!おい、直ぐに警察病院へ運ぶぞ!…君は立てるか?」
「わ、私は…。安室さんが、安室さんを助けて…!」
「この人は絶対に死なせません、信じてください。」
男の言葉に、小鳥は頷いて力の抜けた安室の腕を取る。そして祈るように目を閉じた。
3日後――警察病院
「なんであんな無茶をしたんですか!!!!自分の立場分かってますか!!??」
扉の奥から聞こえた怒声に、小鳥は肩を震わせる。先程下の売店で買ってきたゼリーを危うく落とすところだった。恐る恐るドアを開けると、風見裕也が仁王立ちしている。
「あ、あの〜…安室さんが目を覚ましたって聞いて、お見舞いに来たんですけど…。」
「ああ、桜庭さん。態々すみません…ウチの上司の為に。では降谷さん、俺は帰りますけどくれぐれも安静に!抜け出そうとしちゃダメですよ!桜庭さん、見張りお願いしますね。」
始末書の束を置いて去っていく風見を見送り、小鳥は再び病室に入る。顔を合わせるのが気まずくて逸らしていると、安室に名前を呼ばれた。
「小鳥さん…」
「なんですか?」
「こっち向いてください。」
「今変な顔してるから駄目です…。」
「そんな事無いです、顔見せて。小鳥。」
根気負けをして少しだけ振り返ると、安室は嬉しそうに笑う。もっとこっち、との要求に枕元まで寄れば腕を引かれ、頭を撫でられた。
「無事でよかったです。それと、撃たないでいてくれてありがとうございました。」
「撃てませんでした…。お父さんの、敵だって思ったのに…いざ銃を向けたら安室さんは違う気がして。」
「………全部、話しましょう。そこ、座ってください。」
促されるままベッド脇の椅子へと促され腰掛ければ、安室はこれまでの経緯をゆっくり話だした。
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