謎の遺留品


「あ、安室さん本人って…」
「毛利先生がトイレに入ろうとしたときに丁度返信が来ましたよね?コナン君が入ろうとしたときも…。タイミングが良すぎて不自然だとは思いませんか?」
「…確かに、メールには皆さんでって書いてありました…。おじさま以外にも来る人がいるのを知ってるみたいに…。」
先程感じた違和感の正体がわかり、それを口にすれば安室はにやりと笑う。
「それにさ、トイレの前に何かを引きずったような痕跡があったよ?」
「おそらく、その誰かは…何らかの事情で依頼人を連れ込み、まだあのトイレの中に隠れているんですよ。」
コナンの助言を受け安室がそう言った時だった。探偵事務所の中に、パンッと乾いた音が響き渡った。安室は一目散にトイレへと向かい扉をあける。しかし一足遅かったようで、両手足を拘束されガムテープで口を塞がれた女性の傍らで、男が拳銃を持ったままうなだれていた。トイレの壁は飛沫血痕で真っ赤に染まっている。小鳥はこの惨状に腰が抜け、その場にへたり込んだ。

トイレに居たのは、樫塚圭と言う女性で小五郎の依頼人だった。その件で事務所を訪れたら、自殺した男にスタンガンで気絶させられ、ガムテープで拘束されていたようだ。
「それで――樫塚さん。毛利くんたちが帰って来て焦ったこの男は銃口を口の中に入れて発砲し自殺したというわけですな?」
「はい…。逃げないようにブーツを脱がされ靴紐まで抜かれました。」
「しかし何の目的で貴女をトイレへ?」
「ず、ずっと…質問責めにあっていました。この鍵はどこの鍵だ…早く言わないと殺すぞって。」
安室はどうやら思うところがあるらしく、話を聞きながら険しい表情をしていた。コナンも同じように首を捻って考え込む。
「凄く、焦っていたみたいです。早くそのロッカーを見つけないとやばいって言ってましたから。」
「しかしねぇ樫塚さん。本当にあの男に見覚えは無いのかね?目的が貴女のお兄さんの遺品なら、お兄さんの知り合いと言う可能性が高いんだが…」
「兄の友人には…あまりあったことがありませんから。」
「ちなみに、お兄さんは何で亡くなったんですか?」
安室が右側から問いかけるが彼女は無反応だ。もう一度声量を上げて問いかければやっと気づいたようで答え始める。
「あれ?今のって凄く、身に覚えがあるような…。」
何故か既視感を感じて樫塚圭の方をみれば、安室と目があった。そこで思い出す、自分の右側に人が立った時の感覚だと。つまりこの樫塚圭と言う女性は今現在右耳が殆んど聞こえていない。そのことに安室も気づいたようだった。そうこうしている間に、目暮が小五郎に見せるため、男の遺品を机に広げた。遺品は、大量の小銭と札の入った財布、それとタバコが二つにライター、携帯とスタンガンだ。
「こんなにポケットに入ってたのか…。で、ロッカーの鍵は?」
「それなら今高木君が管理会社に問合せしてるからここにはない…。ところで樫塚さん、トイレに落ちていた二枚のタオルのうち、片方のタオルの先が濡れていたようですが何故だか分かるかね?」
「さぁ…怖くてずっと俯いていましたから…。」

その後、ブーツの結び目について聞かれた彼女は死んだ兄の事を思い出して涙ぐんだ。
まだ兄を失って日が浅い彼女を思い、その他の事情聴取は後日行うことになり安室は彼女を家まで送る、と名乗り出た。
「小鳥さん、僕は樫塚さんを家まで送り届けますけど…先に帰ります?」
「え?えっと…一緒に行きます。」
いくら公安の護衛が付くと言っても、あんな事件の後に一人で家にいる気にはならない。
小鳥は樫塚圭の家まで同行を決めた。
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