部屋の痕跡


「あの、安室さん…どう見ても人数オーバーなんですが…。」
「バレなきゃいいんですよバレなきゃ。」
助手席に樫塚圭、後部座席に小鳥、膝上にコナン、小五郎、蘭を乗せた車は颯爽と国道を駆け抜ける。確か彼のRX-7は最高でも4人乗りだったような、と小鳥は思った。

樫塚圭の案内通りマンションにつき、6階までエレベーターを昇る。それなりに良いマンションだ。樫塚圭は兄と二人で住んでいると言っていたが、それには違和感があった。
「あの、もうここで大丈夫ですよ。誰も待ち伏せしていない事は分かりましたし…。」
「じゃあ、私たちはここで…」
蘭がそう言ったのに被せるように、コナンはわざとらしく声を上げた。
「あーーー!トイレ!トイレ行くの忘れてた!どうしよう、お…お姉さんトイレかして!我慢できないよぉお願い!」
その様子に、仕方ないと思ったのか樫塚圭は玄関を開ける。その瞬間、コナンと安室の雰囲気が変わった。
「トイレは入ってすぐ右側だから…。」
「あの〜…すみません、実は自分も我慢してまして…。」
「お、俺も…。」
コナンに続き、安室と小五郎も申し訳なさそうにそう言いだす。
「なら、皆さん少し寄っていきます?お茶くらいしか出せませんけど…。」
彼女はそう言い、結局全員でお邪魔する事になり小鳥はため息を吐いた。
「(…なんか変なにおいするし早く帰りたい…。ここ本当に樫塚さんの家なの?)」
「小鳥さん、僕の傍を離れないでくださいね。」
「……トイレ行きたいんじゃ無かったんですか?」
小声で話しかけてくる安室をジト目で見れば、彼は笑った。おそらくトイレに行きたいのは口実でこの部屋の中に事件の手がかりがあるのだろう。そしてそれに気が付いたのはあの幼馴染も同様だ。トイレに行くフリをしてどこか見つからない場所に隠れているに違いない。安室はさらに小声で小鳥へと話しかける。
「いえいえ、最近何かと物騒ですからねぇ…拳銃を持った連中が銀行強盗とか…。」
「確かに連日そのニュースで持ち切り…ってまさか、あの強盗事件にかかわりがあるんですか?」
「ええ、十中八九。先ほど圭さんが見せてくださったお兄さんの写真…どこかで見たことあると思いましたが、あの強盗事件で死亡した銀行員です。」
「…?お兄さんの敵討ちって事ですか…?」
「さぁ、そこまでは…苗字も違いますしね。上手く言って家に上げて貰ったんです。
もう少し調べてみましょう――…バイトの時間ですよ。」
つまり、手伝えと。
どうやらこの事件が解決するまで帰る気は無いらしい――…それが探偵の性、つまりは好奇心だと小鳥は実感した。
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