樫塚圭の謎


小鳥は、樫塚圭がお茶を淹れている間に机の上の片付けをする。彼女曰く、昨日は大学時代の友人と集まって飲んでいたとか…兄を亡くしたばかりで傷心の女性がここまで散らかすほど飲むのだろうか?と考えれば考えるほどに新たな疑問が浮かぶ。小五郎が何気なく付けたテレビでは既に、先ほどの探偵事務所での事件がニュースになっていた。
「もうニュースになってる!お母さん心配してるよ…、携帯電源切ったままだし!」
蘭が慌てて携帯を取れば、電源を入れた瞬間着信を告げた。
「もしもし?」
『どうして電源を切ってるんだ!心配したじゃないか!!!!』
「せ、世良さん!?ごめん、こっちバタバタしてて…」
「おじさま、世良さんって?」
「んー?ああ、蘭の友達で女子高生探偵だとよ。」
(この町、探偵多いな)そう心の中で思いつつ、会話に耳を澄ますと、その「世良」と言う彼女からの電話にだいぶノイズが入っているのが解る。
「ごめん、なんかノイズが入って良く聞こえなくて…」
蘭は困ったようにそう言う。小五郎はハッとした表情になり、安室は蘭と世良の通話を切断した。
「圭さん!この部屋、盗聴器が仕掛けられてる可能性があります。」
「え?」
「盗聴器の電波によって通話にノイズが入るんだよ――…ったくなんだって圭さんの部屋に?」
「とにかく、今から部屋を回って盗聴器を探します…良いですね?」
「…ご、5分だけ待ってください。下着とか片付けるので…。」
樫塚圭はそう言うとパタパタと奥の部屋へと走っていく。彼女の姿が部屋から見えなくなれば、安室はポケットから何やら機械のようなものを取り出した。
「なんですか、それ?」
「盗聴器発見器ですよ。」
「――…なんでそんなもの今持ってるんですか?」
「企業秘密です。ちょっとそんな顔で見ないで下さいよ。」
まるで盗聴器があることを初めから知っていたような彼に、小鳥は再びジト目を向ける。どうやら安室は、探偵事務所の時から件の殺人事件の犯人が樫塚圭なのではないかと疑っていたようだ。
「…まあ、彼女はそもそも『樫塚圭』じゃないのかも知れないですけどね。」
「?…それにしても、圭さん遅いですね。出てってから随分経つんですけど…。トイレかな?」
リビングを出て廊下から辺りを見回すも、樫塚圭の姿は見えない。それどころか先ほどからコナンの姿も見えないのだ。まさか――と不安が胸をよぎり、拳を握る。
「小鳥さん、今から盗聴器を探すので携帯の音楽を音量マックスで掛けて貰えますか?」
「は、はい!」
「……コナンくんなら大丈夫だと思いますよ。僕たちは僕たちの仕事をしましょう。」
安室の言葉を聞いて、小鳥は確信した。樫塚圭は既にこの部屋に居ない、そして江戸川コナンもまたここには居ないと言うことを――。
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