普通じゃなくても
「ここって…。」
小鳥は目の前にそびえる建物を見上げた。国家公安委員会――つまり警察庁だ。
中に入るとすぐに風見が出迎える。そのまま連れていかれたのは小さな部屋だった。
「なんか尋問されるみたいだなぁ…。」
「すみません、急だったものですから部屋の手配が出来なくて。」
風見は申し訳なさそうにしながら彼女を椅子へと促した。安室――降谷は先に家を出てこちらに向かったはずだが、まだ姿が見えない。
「かつ丼とか食べれるんですか?」
「いえ、あれ実は実費なので…。」
「け、刑事ドラマの醍醐味の一つが…最近見ないけど。」
他愛ないやり取りをしていれば、ノックの後に何やら大量の資料を抱えた降谷が入ってくる。いつもとは違うスーツ姿に、彼女は少し頬を赤らめた。
「すみません、お待たせしました。風見、ありがとうな。」
「いえ、問題ありません。それで…長官の許可は取れましたか?」
「小鳥が信用に足る人物だと俺が判断すれば話すことは構わないとさ。だが話すか話さないかは…小鳥が決めることだ。」
降谷は小鳥の向いに座ると、資料を机の上に並べた。
彼女も良く知る事件――10年前のアメリカで起こった無差別殺人のものだ。
「俺は今から、公安が追う組織の事を話す。けど、それを知ってしまったら元のように一般人として生活することは出来ない。この話を聞くか聞かないか、決めるのはお前自身だ。」
小鳥は膝の上で拳を握る。
「――…組織の事、幼馴染から聞いていました。でも、私には関係ないし、悪いけど危険な事にはかかわりたくないって思ってた。私は、普通の女の子で居たいって思ってた。
でも彼が、コナンくんが、安室さんが…皆傷つきながら戦ってるのに私だけ知らないフリはもうできません。」
答えはもう、ここに来る前から決まっていた。
「みんなの力になれるなら、私は普通じゃなくていい。教えてください、降谷さん。
何より私は――…父さんを殺した奴らを許すわけにはいかないです。」
「良い覚悟だ。」
降谷は笑い、風見はほっと胸を撫でおろす。決意を決めた小鳥は、ゆっくり瞳を閉じて「普通の自分」に別れを告げた。
―――運命の出会い編 完
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