手掛かりを探して


「…う、うーん…頭が痛くなってきた。」
「ちょっと休憩するか?」
風見に出してもらった紅茶がすっかり空になったころ、小鳥は机に突っ伏した。
「大丈夫です…。でもまさか、こんな大きな研究が水面下で行われていたなんて。何も知らないって言うのは良い事ばかりじゃ無いですね。…私は、向き合っていかないと。」
彼女は一息つくと、左側の資料に手を伸ばした。それは、彼女がかかわった唯一の事件だ。一枚一枚、覚えている記憶と照らし合わせながら確かめるように読んでいく。暫くして、ふと彼女の手が止まった。
「どうした?」
「…私はクリスチャンじゃないのに、なんでクリスマスに教会に居たのかなって。」
事件の起こった日は12月24日――教会ではキリストの生誕祭が行われる日付だ。彼女の記憶ではクリスマスは毎年母と家で祝っていた。何故、この年に限って教会に居たのか―それが疑問で首を傾げる。
「それに、この犯人も組織の人間なんですよね?コードネームはキルシュヴァッサー…私を殺すために事件を起こした…。それにしては不自然な気がするんです。私を殺したいなら乱射事件なんて起こすべきじゃない。私一人を狙った方が圧倒的に楽です。一番気になるのは、何故情報を持ってるのが母さんじゃ無く私だと思ったのか。」
彼女の疑問はもっともだ。大切な情報を託すなら生まれたばかりの赤子よりも大人の方がうまく隠せる。それなのに父親――アラックはそれをしなかった。
「しかも組織は、小鳥の母親を除外している…つまり母親が何も情報を持っていないと確信している?」
「もしかして父さんの所属していたCIAにスパイがいる…とか。」
「いや、まさか〜!」
「あはは、そうですよね!」
「(いや、あり得るな…)」
一度は笑い飛ばしたものの、降谷はすぐ真剣な顔になる。何しろ自分自身が潜入捜査官なのだ。その逆が無いとは言い切れない。それはアメリカに限ったことでは無く全世界共通だ。降谷が把握している中でもFBI、CIA、MI6、CSIS、BND――そして公安など、全世界各地に潜入捜査官がいる。しかしそれと裏腹に、組織が全ての捜査局にスパイを忍び込ませている可能性も否定できない。
「スパイの可能性がある以上、この情報を共有するわけにはいかないな…。炙り出そうにも八方塞がりだ。」
「…急いで考えても何も思いつかないですよ。とりあえず今日は家に戻ってロールキャベツ食べませんか?」
小鳥がお腹が空いたと呟けば、同時に2人の腹が鳴る。降谷は「ふは」と笑いを零した。
「まあ焦っても良い事なんて何もないよな。――…帰るか、家に。風見、これ片付けといてくれ。」
「えっ…ああ、ハイ。」
資料の整理と片づけを最も信頼のおける部下に任せた降谷は、
小鳥の腕を引いて部屋を後にした。
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