劇場『宇宙』
夕方、コナンたちは劇場『宇宙』の入っている汐留ビュータワーに来ていた。東京臨海新交通・ゆりかもめの汐留駅からすぐのところにあるビュータワーは、四十三階建てのオフィスビルで、最上階が一般開放の展望フロアになっており、劇場『宇宙』の入口は一階にあった。ロビーには開演を待つ大勢の客がいて、コナンの横に居た鈴木園子は嬉しそうに周囲を見渡した。
「あ〜ワクワクする!実はこのお芝居見たかったのよね!」
「園子さんほどの方なら関係者席で悠々と観劇できそうなものですが…」
「ふふ、でもそれをしないのが園子ちゃんの良い所ですよね。」
安室の呟きに、隣の小鳥はくすり、と笑った。
「おい、コナン。なんだよお前、そのリュック。邪魔くせーな…。」
「ああ、ちょっとな。」
元太がコナンのリュックを見て顔を顰める。光彦と歩美が不思議そうに首を傾げ、元太はジロリとコナンを睨んだ。
「もしかしてお前、自分だけ食いモン持ってきたんじゃねーだろうな?」
「…オメーじゃあるまいし…。」
コナンが苦笑いをすると、小五郎が「こら!おまえら!」と注意した。
「特別に連れて来てやったんだから、行儀よくしてんだぞ!」
「はーい!」
元気よく返事をする子供たちの後ろで、灰原と並んでいた阿笠博士が「すまんのぅ」と頭をかいた。
「わしらまで連れて来てもらって」
「あ、いやぁ…」
小五郎がガハハ…と苦笑いしていると、真佐代が「毛利先生!」と駆け寄ってくる。
「すみません、お待たせしてしまって。」
「矢口さん、どうも。」
「どうぞ、こちらへ…。」
真佐代は小五郎たちを楽屋へ通じる通路へ案内した。
「矢口です。毛利先生がお見えになりました。」
『牧樹里様』とプレートがかけられたドアを真佐代がノックすると中から「どうぞ」と声が聞こえてきた。扉を開けると広く豪華な室内には花や果物が沢山置かれていて、鏡の前では樹里がヘアメイクの酒井なつき(25)に髪をセットしてもらっている最中だった。
「ようこそ毛利さん。こんな格好で失礼します――なつきちゃん、こちらはあの有名な毛利小五郎さん。貴女も知っているでしょう?」
樹里に紹介されて、なつきは手を止めて会釈をした。
「酒井なつきです。」
「どうも。」
ドアの前に立っていた小五郎が歩み寄ろうとすると、子供たちが「わぁ〜!」と小五郎を押しのけて駆け出した。騒がしい子供たちに樹里が一瞬ムッと眉を寄せる。
「すみません、お言葉に甘えて子供たちまで連れてきちゃいました…。」
「いえ、構いませんわ。」
笑顔に戻った樹里は、傍に置いた箱からチョコレートを一粒取って口に入れる。
「あ…。」
「小鳥さん?どうかしました?」
「た、大したことじゃないんですけど…牧さんって、チョコ食べた後指舐める人なんだな〜って…。」
「ああ、小鳥さんも良くやってますよね、ポテト食べた後とかも。」
「言わないでくださいよ〜…なんか今思うと恥ずかしい…。」
安室に揶揄われ、小鳥は赤らんだ頬を抑えた。
「樹里さん、ダイビングおやりになるんですか?」
ダイバー姿の樹里が写っている写真を見て、小五郎は問いかける。
「ええ、まだ始めたばかりですけど…。今度ご一緒しません?」
「良いっすなぁ!ぜひ!」
鼻の下を伸ばす小五郎をみて、蘭は不機嫌そうにため息を吐く。
同時にコナンも苦笑いをした。
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