キッドの思惑
やがて飛行機は牽引車と接続され、滑走路にむけてゆっくり動き出した。
『業務連絡です。乗務員はドアモードを変更してください』
アナウンスが流れると、キャビンアテンダントは中央の非常ドアに近づき、取り付けられた緊急脱出用の装置を自動展開するモードにセットした。離陸に向けて準備が進む機内の中で、安室は難しい顔をする。
「どうしました、安室さん?」
「いえ、先ほどコナン君から聞いた話なんですが…果たしてキッドはゆうべ本気で宝石を奪う気があったのかと思いまして。」
本気でそのつもりなら、新一に化けてみんなの前に現れたりせず、もっと楽でスマートな方法があった筈だ。するとその時、前の席から子供たちの声が聞こえて来た。
「俺の席は4のK、キッドのKだな!」
「僕の席は4のJですから、ジャンボのJですね!」
「じゃあ私は4のBだから…」
考え込む歩美を見て、コナンと安室はハッとした。小鳥は安室の袖を引き、安室に自分の半券を見せる。
「私は6のAだから、安室さんのAですね!」
「…っ、可愛い…。じゃなくて、キッドの予告状に書かれてた英単語…あれは『フォネティックコード』だったんですよ!」
「ふぉ、フォネティック…?」
「無線通話での聞き間違いを防ぐための通話コードで、Rは『Romeo』Jは『Juliet』、Vは『Victor』、Bは『Bravo』と言うんです。それにこれは、航空機の無線通話でも使われている…」
安室は説明しながらキッドの予告状を思い浮かべた。
「つまり、『二十六の文字が飛び交う中』と言うのは、そう言うアルファベットが飛び交う飛行機の中での犯行を予告しているんです。それも東京から函館に向かうこの飛行機の中で。」
「飛行機なら帰りにだって…もしかして、あのトランプですか?」
安室は「ええ」と頷いて説明を続ける。
「スペードの2のカードが半分に割れていた。あれは2で割り切れない『奇数』を示しているんです。東京から出発する便は奇数、到着する便は偶数。となればキッドの犯行は間違いなくこの機内で起こると断言しても間違いなさそうですね」
キッドの思惑が解った安室は、前方に座る樹里の指輪に目を向けた。コナンもまたにやりと笑って同じ指輪を見ている。折角の函館が、なにやら大変な事になりそうだと小鳥は溜息をついた。
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