上空での殺人


コナンはカーテンの隙間からコクピットを覗く。どうやら樹里は以前ここのキャビンアテンダントだったようで、機長と副機長に指へのキスを促していた。コナンが席に戻ると、樹里は直ぐにカーテンを開けて出てくる。戻って来た彼女を見て真佐代が立ち上がり、チョコレートの箱を差し出した。
「牧さん、はい、チョコレート」
「ありがとう」
箱の中にはココアパウダーを振りかけた四種類の高級トリュフチョコが十六個並んでいて、樹里は迷った末に右手の親指と人差し指で一粒とり、口の中へ入れた。そしてココアパウダーのついた指を舐める。
「毛利さんもいかがですか?」
「ああ、いただきます!」
真佐代にすすめられた小五郎は、無造作に一粒とって口に入れた。
「うんめー!」
その美味しさに小五郎は感動しているその時――突然、樹里がウッと喉を抑えた。
「ウ……ウウッ…!」
「どうしました樹里さん!?」
小五郎とコナンが駆け寄り、一同が樹里の異変に気付く。ガタッと安室が立ち上がった事によって、転寝をしていた小鳥も目を覚まし、樹里に視線を合わせた。
「ウウ……ウアア…アアッ!」
樹里は呻きながら喉を掻きむしり、膝をついてのけぞると、床に倒れて全身を痙攣させ始めた。呼吸困難に陥った樹里は目を見開き、もがきながらも右手を懸命に伸ばした。が、やがてその手がパタリと床に落ちる。小五郎は、樹里の首に手を当てて、首を横に振った。
「…毛利先生、アーモンド臭がします。」
「ああ……青酸中毒だな」
小五郎が頷くと、伴がいきなり「チョコレートだ!」と叫んだ。
「チョコに毒が入ってたんだ!」
「ま、待ってください!だとしたらおじさまにもとっくに症状が出ているはずです。」
小鳥が慌てて駆け寄るが、小五郎は何とも無さそうに立っている。つまり樹里が食べたチョコレート以外に毒は入っていないか、別の場所――例えば彼女の指に毒がついていたかの二択になる。
(しかし…なんで樹里さんが…)
コナンは厳しい目で床に横たわった樹里を見つめた。その右手にはめられたスター・サファイアの指輪は、主を失っても変わらず光輝いていた――。
*前次#

top