殺害の動機
やって来たコナンを小鳥が膝に乗せ、安室が口を開こうとしたとき
「わかりました!わかりましたよ犯人が!」
と、小五郎の自信満々な声が響く。まあ、間違っているだろうと予想しながら耳を傾けると、彼はわざとらしく咳ばらいをして推理を始めた。
「亡くなった樹里さんはこの飛行機に乗ってから二種類のものしか口に入れて居ません。その二種類とは――先程問題となったチョコレートと天子さんのビタミン剤」
天子が思わず「え」と声を上げた。隣の伴も驚いて「お、お前…」と天子を見る。小五郎は自信に満ちた顔でニヤリと笑った。
「もうおわかりでしょう。この飛行機内で、牧樹里さんを殺害した犯人は…天子さん、貴女です!!」
一同が驚いて天子をみると、彼女は「じょ、冗談じゃないわ!」と立ち上がった。
「とんだ言いがかりよ!第一、私には動機が無いわ!」
「そうかしら」
間髪入れずに言ったのはなつきだった。
「樹里さんを殺害する動機が無い人なんか、この中にいないんじゃない?」
天子がギョッとしていると、立ち上がった英理がなつきを振り返った。
「あなた、ヘアメイクの酒井なつきさんね?どういう事かしら」
「私、樹里さんと一緒に居る時間が長かったので、彼女をめぐる人間関係は一番わかっていたつもりです。――まず、伴さん。彼は今度の劇では演出家も兼ねてましたが、実際の演出は殆んど樹里さんがやっていました。元々、樹里さんを女優として育てたのは伴さんですが、今では反対に樹里さんに逆らうことが出来ない。そんな彼を、夫人の天子さんがきつくなじっているのを私は何度も見ました」
天子が渋った顔で黙って伴の隣に座ると、なつきは伴の後ろに座った成沢をみた。
「成沢さんは三年前、樹里さんに望まれて協議離婚しましたが、樹里さんにまだ未練があるらしく何度も復縁を迫っては断られていました。その樹里さんも、若い恋人の新庄さんに飽きてきた様子で、誰か可愛い子はいないかって私に聞いていました。そして、マネージャーの真佐代さん。」
なつきに目を向けられた真佐代は「え」と目を丸くした。
「いつも樹里さんに『暗い」だの『気が利かない』だの言われて、みんなの前で恥をかかされていましたよね。かくいう私も、我儘な樹里さんにいつも振り回されて――ほかの仕事をしたいと思っても彼女に邪魔をされて…。嬉しい反面、恨んでも居ました。ね?みんな、彼女を殺害しても不思議はないのよ」
なつきは一同を見渡すと、真佐代の隣に座った。一同は、なつきの言葉に反論できないようで押し黙っていた。安室はそっとコナンに耳打ちする。
「樹里さん、チョコレートと食べるとき、指についていたココアパウダーも舐めていましたよね?楽屋でもやっていたのであれは彼女の癖、近しい者なら誰でも知っていると思います。そして早すぎるトイレ…これは先程小鳥が教えてくれたんですが、彼女は耳抜きをしにトイレに立ったのではないか…と」
「じゃあ機内で樹里さんの気分が悪くなったのは…。」
「皮膚から吸収された青酸中毒…。読めましたね、このトリック…そしてそれを行った犯人も。」
コナンと安室は顔を見合わせて笑った。
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