消えた幸せ
消防と警察に連絡を終えると、小五郎が店内に戻って来る。彼女がどうなったのかを問えば、彼は首を横に振った。人が死ぬ感覚は何度見ても慣れないものだ。思わず膝から力が抜け、ふらついた所を例のウエイターに抱き留められた。
「す、すみません…。」
「大丈夫ですか?顔が真っ青だ…無理もない。少し休んで居た方がいいですよ。」
彼に腕を引かれ、小鳥はソファに腰を下ろした。
「遺体は黒焦げで、今歯の治療痕の照合をしてもらっていますが、恐らく亡くなったのはこの車の持ち主の加門初音さんかと…。」
「車が燃える直前に、その加門さんから自殺をほのめかす電話があったと言うのは本当かね?」
到着した警察が現場確認を始める。コナンも一緒になって何か探しているが、小鳥はどうにも一緒に居る気にならず、店内から様子を見る。寒気がして腕を擦ると、ウエイターが暖かい紅茶を差し出した。
「折角のパーティがこんなことになって…。自殺なんて彼女に一体何があったのかな…。」
「…本当に、自殺なんでしょうか。」
「…?貴方は他殺だと思うんですか?」
首を傾げながらウエイターの方を見る。彼はなにか言おうとしたが、それより先に玄関を開ける音が店内に響いた。入って来たのは、先ほど現場確認をしていた警察の目暮と高木だ。
「え、殺人?自殺じゃなくて?」
「ああ、コナンくんが見つけた付け爪の先に僅かに皮膚が付着していてな…。聞けば彼女はあの付け爪をついさっきネイルサロンでつけて貰ったそうじゃないか!となると、その爪の先に付いて居たのは彼女が車の傍で誰かと争った時に付着した、犯人の皮膚の可能性が高い。…ところで伴場さん、このヘアブラシに見覚えは?」
目暮が袋に入れられたブラシを取り出すと、「俺のものだ」と伴場が答える。
「彼女の爪に付着していた皮膚のDNAと…このブラシに付いてる毛髪のDNAがほぼ一致したんですよ!」
「な、なに言ってんだ!?お、俺が初音を殺したって言いたいのかよ!」
「あ、いえまだぴったり一致した訳ではないので、できれば貴方の承諾を得てから正確に鑑定したいのですが…。」
「でも、彼女に引っかかれた傷をごまかすために、僕に殴りかかって怪我をしたって場合も考えられますよね?」
静かな声が激高する伴場を遮った。小鳥は思わず息をのむ。
同時にこれでは火に油を注いで、また殴り掛かられるのではないかと不安になった。だが、実際そうならず、もう一人男が会話に加わる。
「フン、良く言うぜ。愛しい女が誰かのものになっちまう前に殺したんじゃねーのか?ウエイターさんよぉ!」
「え?どういう事ですか?」
「自分で言わないなら俺が言ってやるよ!こいつは初音と密会してた…愛人なんだよ!」
伴場の怒号に、小鳥はビクリと肩を震わせる。
それは無いだろう…と思いつつ彼を見るとウエイターはあっさりと彼女と会っていた事を肯定した。彼はゆっくりと眼鏡を外すろ不適に笑う。
「そりゃ…会ってましたよ。なにしろ僕は彼女に雇われていた…プライベートアイ…。探偵ですから。」
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