もう一人の探偵


安室透と名乗った彼は、彼女に浮気調査の為雇われていたと話す。そして、先ほどのサングラスの男もまた、伴場に雇われた探偵だった。
「えっと、つまり伴場さんと加門さんはお互いに探偵を雇ってお互いの浮気調査をしてたって事ですか?加門さんは伴場さんの動向を監視させるために、安室さんがバイトで採用されたお店を会場に選んだ…。なんか、複雑で頭痛くなってきたんですけど。」
「じゃあ彼女が車の中で火をつけた原因は、この店でのお前のご乱交をこの男が電話で彼女にチクったからかもしんねーな!」
「ぼ、僕はそんな電話してませんよ!それはえっと、貴女…小鳥さんでしたっけ?
が証明してくれると思いますよ。彼女、ずっと僕の事目で追ってましたから。」
何をいきなりとんでもない事を言い出すんだこの男は…。
と口に出なかっただけ幸いだ――などと思いながら、小鳥は眉間に皺を寄せる。
「なんだお前、ああいう男が好みなのか。」
「違うわよ!…あーえっと、知り合いに似てたのでつい見ちゃって。でも安室さんは電話もしてなかったし、外にも出てないですよ。店の裏口が塞がれていたなら、出入りできるのはそこの扉だけだと思いますし…。」
「いで!!」
見えないようにコナンの背中をつねり、彼女は愛想笑いを浮かべる。しかし出入りできる場所が正面扉だけと言うことは、これを他殺とすることは誰だって不可能なのだ。つまり加門初音は自殺と言う事になる。――しかしそれではDNAの説明がつかない。
「そう言えば彼女、浮気調査の中で顔を曇らせた事が1度だけありました。」
「曇らせた?」
「自分、探偵なんで彼の事を色々詳しく調べていたんですけど、そうしたらあることが分かったんです。彼は彼女と同じホテル火災で助け出された2人で、身元不明のまま同じ教会で育てられていた事が…」
安室の話によれば、2人の両親は不明であり、彼の方はすぐ里親に引き取られたようだ。加門初音はその後は自分で調べると言っていたとも彼は言う。
「なあ、小鳥、初音さんの身長ってお前より低かったよな…。」
「え?うん…でも彼女かなりヒールの高いブーツ履いてたから、150そこそこだったかも。それが、どうかした?」
コナンの方に視線を戻せば、早くも何やら考え始め、こちらの声は聞こえていない。探偵たちも警部と話し込んでいて会話に入ることが出来ない状況だ。何か思いついたのか外へ駆け出していくコナンを見て、小鳥はため息をついた。
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