最悪の事態
コナンは不穏な予感がしてならなかった。事件は終わったというのに、まだ何かが頭の中にこびりついている。彼は目を閉じて今までの機内の様子を振り返った。頭の中によみがえってきたのは――樹里の手にキスをする新庄、コクピットに珈琲とクッキーを運ぶ三沢…そして機長に右手の甲を差し出す樹里…。次の瞬間、コナンの目が見開かれた。
「ねぇっ!さっき機長さんたちに持って行ったお菓子、食べないように言って!!早くしないと、機長さんたちが危ないんだ!」
コナンの声を聞きつけた小五郎は、怪訝そうにコナンを見る。
「バカか、お前は。毒は菓子に入って無かった――」
「菓子じゃねぇ!!機長さんたちの指にも毒がついてるかもしれないんだ!!」
「なにぃ!!??どう言う事だ、きちんと説明しろ!」
その時、非常ドア近くのインターホンに出ていた進藤が「はい、すぐに!」とインターホンを切ってコクピットへ駆け出した。コナンが後に続き、安室と立ち上がった小鳥も追いかける。進藤が電子ロックを解除してドアを開けると、大越と中屋が座席に座ったまま胸を押さえて苦しがっていた。
「機長!どうなさいました!?中屋さん!大丈夫ですか!?」
進藤が声を掛けると、呼吸困難に陥った機長が前に倒れこみ、操縦桿を前に倒した。ディスプレイの上部にあるグレアシールドのパネルの自動操縦ライトが消え、飛行機が急降下を始める。
「しまった!オートパイロットが解除された!」
機体が急激に落下してコナンは壁につかまる。安室も壁につかまり、倒れてきた小鳥を抱き留めた。警告音が鳴り響く中、進藤は倒れこんだ機長の方を揺さぶった。
「機長!しっかりしてください、機長!」
「はやく引き起こして!座席をずらして!」
進藤が機長を引き起こすと、コナンは機長席の前に飛び込んで操縦桿を掴んだ。コントロールパネルに両足をかけ、渾身の力を振り絞って操縦桿を引き戻す。すると、急降下していた機首が徐々に上がり、やがて機体が水平に戻った。
(よし!オーパイのスイッチを――)
息をついたコナンがグレアシールドパネルを見上げると、後ろから指が伸びて、自動操縦のスイッチが押された。
「新庄さん!」
「でかしたぞ、ボウズ!」
小鳥は、後ろで機長たちの脈を取りながら不安そうに声を上げた。
「呼吸困難を起こしてる…多分、青酸中毒だと思うけど、すぐに医者を!」
すぐに進藤がインターホンを取り、機内アナウンスを流した。
『機内で急病人が発生しました。お客様の中にお医者様がいらっしゃいましたら、至急お近くの乗務員まで…』
すると、一階席の後方に座っていた中年男性が立ち上がり、近くに居たキャビンアテンダントに声を掛けた。
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