不運な事故


中年男性の医師は、キャビンアテンダントに連れられてコクピットに入ると、操縦席でグッタリしている大越と中屋の脈を測り、触診を始めた。
「やはり、即効性の毒物による中毒ですね。応急処置をしますので、二人をキャビンに移してください。恐らく操縦は無理でしょうから、すぐに無線で連絡を」
医師の言葉に、子供たちは「え!?」と驚いた。
「機長さんたち、治らないんですか!?」
「青酸中毒の治療には、亜硝酸アルミや亜硝酸ナトリウムが有効なんだけど…どちらも持ち歩くものじゃ無いし機内には無い。命に別条が無くてもとても操縦できる状態じゃないわ」
続けるように小鳥が説明して首を横に振った。
「でも、操縦席に誰も居なくなっちゃう!」
コナンは、心配する歩美と光彦に「大丈夫だよ」と声を掛けた。
「オーパイに戻したから、自動操縦で飛んでいられる」
小五郎が、成沢と伴を呼び、機長たちを客室へと移動させる。その際に飛行機が揺れ、伴の腕が上部のパネルへと当たった。すぐに手を戻し、成沢と共に中屋を運んでいく。操縦席中央下段のディスプレイには、燃料タンクを仕切ってた四つのクロスフィード・バルブが解放されたことが示されていた――。

「コナンくん、どうして機長さんたちまで…」
園子が心配そうに声を掛けると、コナンは顔を上げて説明を始めた。
「さっき樹里さん、コクピットに入ったんだ。その時、機長さんと副操縦士さんが樹里さんの手を取って、キスしたんだよ。その時彼女の指についていた毒が…」
「不運だったわね」
灰原がつぶやいた。
「普通に握手していれば、毒は二人の手のひらについただけで口には入らなかったんだもの」
確かに灰原の言う通りだった。樹里が手の甲へのキスを求めなければ、二人のパイロットを失う事は無かったのだ。
「問題はオーパイが着陸まで出来るのかって事なんだけど…。」
コナンがコクピットを振り返ると、「もう調べたよ」と新庄が顔を出した。
「ILS12アプローチで、データも着陸までインプット済だ」
園子が「ILS?」と尋ねると、安室は「計器着陸装置――滑走路への侵入コースを指示する無線着陸援助装置の事ですよ」と答えた。
「函館空港は滑走路が一本で、西側から着陸する場合だけ、オートラウンドが可能なんです」
「要するに、着陸できるって事なんだな」
伴がほっと胸を撫でおろし、一同も安心したような表情で顔を見合わせた。
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