必要な人、必要な場所


「なんですって!?機長と副操縦士が意識不明!?」
865便から緊急事態を告げられた函館空港の管制官は、思わず声を荒げた。レーダー室の隅で珈琲を飲んでいた他の管制官たちが、その声に驚いて振り返る。
「失礼、貴方のお名前は?」
『乗客の新庄です。乗り合わせた医師と医学生の女の子が今治療にあたっていますが、命に別状はないそうです。』
「そうですか…良かった…。新庄さん、現在の飛行状況は分かりますか?」
『現在、高度一万二千フィート。速度は二百八十ノットです。幸い、ISLは着陸までインプットされていますし、フラットやギア操作は多少経験があるのでわかります。後はタイミングさえ指示してくれれば――…」
「わかりました」
管制官は新庄からの報告をメモすると別の管制官に渡し、正面のレーダーをチェックした。とたんにレーダー室が騒がしくなり、管制官たちは慌ただしく動き始める。
管制官との通信が終わると、新庄はハンディマイクを戻し、ドアの外に立っている一同を振り返った。
「と、言う訳で僕が操縦席に座ります。副操縦士席には…すみません、貴方に座って貰えますか?」
新庄が安室を指さす。一瞬、安室は鋭い目で新庄を見たが、すぐに「わかりました」とコクピットに入っていく。
「それと、簡単な手伝いをしてもらいたいから…そだな、君も残ってくれるかい?」
コナンに向けてそう言うと、他の子供たちから羨ましがる声が聞こえる。新庄は「これは遊びじゃないんだ!」と強く言った後、膝をついて子供たちに目線を合わせた。
「君たちにはキャビンに戻って、他の子供たちが騒ぎ出さないように見張っていて欲しんだ。難しい仕事だと思うけど、出来るかい?」
言い聞かせるようにそう言うと、得意気になった子供たちはキャビンに戻っていく。小五郎も不服そうな顔はしていたが「頼んだぞ、お前ら」と言い残してコクピットを後にした。

医師と共に治療にあたっていた小鳥は、機長たちの呼吸が安定してきたのを見ると、ほっと息を吐く。新鮮な空気を吸わせることしか方法はないが、幸い摂取した毒物が微量だった為、このままでも大丈夫そうだ。
「桜庭くん、だったかな?ここはもう大丈夫だから、君はコクピットに戻ると良い。」
「え?でも…」
小鳥は不安そうな顔をする。医師は、そんな彼女に人のいい笑みを向けた。
「今最も君を必要としているのはここじゃなくて、金髪の彼じゃないのかな?傍にいてあげなさい。」
「…!はい、有難うございます先生!」
医師はバックから名刺を取り出すと、小鳥へと差し出す。そこには、東都大学附属病院と記されていた。
「君は非常に優秀だ。研修の際は是非うちの病院へ来てくれたまえ」
「…近いうち、お言葉に甘えさせて頂きます!」
小鳥は笑って踵を返すと、駆け足でコクピットへ向かった。
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