新庄の正体


副操縦士席に座った安室は、座席を調節しヘッドセットをつけた。機長席ではヘッドセットをつけた新庄が、操縦桿に軽く手を置いている。安室は新庄を見て笑った。
「貴方、キッドですね?」
「え?何のことだ?」
「バーロォとぼけんじゃねぇ。安室さんはともかく、小学生のガキをコクピットに残す馬鹿がどこに居んだよ」
「ハハッ、やっぱバレたか」
新庄に変装したキッドは、自分の声に戻りあっさり認めた。
「まあ、今頃本物の新庄は…」
「偽キッドになって函館の樹里さんの別荘にいる、だろ?」
キッドは「ほぉ!」とコナンを見た。恐らくパーティの余興に偽キッドになるよう樹里に言われていたのだ。コナンの推理にキッドはニヤリと笑った。そこにドアを開けて小鳥が入ってくる。
「小鳥さん、機長さんたちは?」
「呼吸が安定したからもう大丈夫ですよ。えっと、なんで安室さんがそこに…?」
「彼の指示ですよ――隣にいる新庄さん、いえ…怪盗キッドのね」
小鳥は「え!?」と驚いて新庄を見る。彼に変装したキッドはやれやれという表情をした。
「そ、それで宝石は?もしかしてもう盗んじゃったとか…」
小鳥が不安そうに聞くと、操縦桿を握ったキッドはフッと笑った。
「やめたよ」
「え?」
「本物のスターサファイアは口に含むと冷たいんだ。あれは偽物だ」
コナンは新庄に変装したキッドが、樹里の右手にキスしたのを思い出した。
「おそらく『ジョセフィーヌ』の客寄せの為に、偽物を本物と偽って公表したってところかな。――どうする?俺を捕まえるか、探偵諸君」
コナンは「ああ」とキッドを見て微笑んだ。
「この巨大な鉄の鳥を、巣に戻してからな」
するとその時、函館空港のレーダー室から通信が入った。
『スカイJ865便。函館タワーに管制を引き継ぎます。周波数を118.35に変えて下さい』
「118.35、了解」
キッドが新庄の声で応答すると、安室は近くの無線コントロールパネルのつまみを回して周波数を変えた。
激しい雨が降り続ける函館空港の管制塔の上空では雷が鳴り響き、三百六十度見渡せる大きな窓からは黒雲に覆われた空に雷光が走るのが見えた。モニターの前に座った管制官の傍には、ヘッドセットをつけた機長が立っていた。
「こちら、函館タワー。管制部長の上杉です。機長の島岡に代わります」
「島岡です。早速ですが、MCP―モード・コントロールパネルは分かりますか?」
『はい、わかります』
無線から新庄の声が聞こえてきて、上杉と島岡は顔を見合わせて軽く頷いた。
「では、そこのAPPというボタンを押してください。そうすれば、飛行機は自動的に滑走路まで降りていきます」
新庄は「了解!」と応答すると、目の前のパネルを探した。
「APP…あれですね」
安室がパネルのボタンを押すと「一安心だな」とコナンは笑った。
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